アクション俳優坂口拓(45)の主演映画「狂武蔵」(下村勇二監督)が21日、公開される。宮本武蔵と吉岡一門の闘いを描いた同作で、宮本武蔵として前代未聞の77分588人斬りのワンシーン撮影に挑んだ坂口がこのほど、日刊スポーツの取材に応じた。

「最初の5分で指の骨が折れた。終わったらあばら骨も折れ、奥歯も崩れていた」と撮影を振り返った。同シーンの撮影は9年前。出資系の理由から撮影前日に映画の製作自体が中止となったが、それでも撮影を敢行。そこには坂口の決意があった。「19歳でアクション俳優を始めてからリアルアクションを求めてきたけど、自己満足でしかなかった。一流のスタントマンやアクション俳優は分かってくれるけど、作品はそういう人向けのものではないし、自分でも迷走していて答えも見つからなかった。そのリアリズムを終わりにしようというのがこれだった」。

当初は10分ワンシーンの予定だった。製作自体が中止となったことから坂口は「70分以上闘ってみないですかと。残ってくれるならやりましょうと言ったら、みんな残ってくれた」。そこには“男”坂口の思いがあった。「それまで稽古してきた仲間に申し訳なくて、かぶいたんです、男として。格好付けてやろうと言ったけど、本当は映画もつぶれたので、そんな精神状態ではなかった。かぶいたけど心では泣いてました」と当時の胸中を吐露した。

その代償は大きかった。「1年間棒に振るぐらい何も手につかなくなった。精神状態は完全にPTSDみたいな感じになってしまった」。13年に1度引退しているが「これがきっかけです」と明かした。

眠っていたシーンは、さまざまな人の尽力でよみがえった。「正直、自分の中では終わっていたこと。でも、応援してくれるみんなの熱い思いだけで、もう1回作り直してくれた。それがうれしいし、感謝しています」と語った。

19年4月からYouTube「たくちゃんねる坂口拓」を開始。そこでは格闘術「ウェイブ」を公開している。「一般の人に分かって欲しくて始めた。アクションがリアルか、リアルじゃないかが分からないから」。映画「キングダム」で主演山崎賢人とのアクションシーンを「CGでしょうと言われた。1人だけ違う動きをする人間がいるって」と笑った。「僕の肉体を使えばCGだと思わせるくらい面白い動きができる。ウェイブを公開することで、人間の体はすごいんだということを世界にも見せていきたい」と胸を張った。

「こんな時期だからこそ、見れば感じることがあると思う。こんなバカなことやってるやつがいるんだから、もうちょっと頑張ろうと思ってくれる人がいたらうれしいですね」と笑う坂口。文字通り“命をかけた”作品に注目したい。【川田和博】

◆坂口拓(さかぐち・たく)1975年(昭50)3月15日、石川県生まれ。01年に映画「VERSUS-バーサス-」で主演デビュー。13年3月に1度引退するが、14年5月に復帰。17年に映画「RE:BORN」で主演。アクション監督や映画監督も務める。19年4月からYouTube「たくちゃんねる坂口拓」を開始し、登録者数は約23万人。175センチ、血液型A。