天皇、皇后両陛下と愛子さまが28日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた映画「Dr.コトー診療所」(中江功監督)地域医療支援チャリティー上映会に出席。主演の吉岡秀隆(52)柴咲コウ(41)中江功監督(59)、山田貴敏氏の同名原作漫画のモデルにもなった、鹿児島県下甑(しもこしき)島手打診療所の元所長・瀬戸上健二郎医師夫妻とともに映画を鑑賞した。

上映会後、囲み取材に応じた吉岡は「コウちゃんが『生きていると、こんなこと起こるんですね』と言ったのが全て。ホワホワした感じ…緊張しますよね」と、率直な感想を口にした。天皇ご一家と上映後、約20分間、懇談をしたが「愛子さまは、とても素晴らしい感想をおっしゃっていたんですけど、緊張のあまり半分くらい(頭が)機能しない。とても、いいことをおっしゃった」と振り返った。

すると、中江功監督(59)が「聞きながら、すごいと…今までに聞いたことのない一番、良い感想。聞きほれた。『島民の皆さんの結束力、現代の医療の問題点を見られた』と、まとめていたけれど、ちゃんと覚えていない」と、愛子さまからの感想を、覚えている限りの記憶を呼び起こして説明した。柴咲は「『チームワークの良さが見えた』と。吉岡さんが、今回の苦悩というか味わった体験の話をされ、私はそばで思ったこと、したことを説明させていただきました」と振り返った。

上映前には、皇后陛下と愛子さまが、左隣に座った吉岡に話しかける様子も見られた。吉岡は「『(作品を)ご覧になったことがありますか?』と。お答えは『1話だけ見たことがあります』と。『島の撮影は、どこが大変でしたか?』と(聞かれた)」と振り返った。また皇后陛下から、中江監督に「映像の迫力がすごい」と感想があったという。天皇陛下は、音楽について「吉俣良さんと中島みゆきさんですよね」と、挿入歌の「ふがらっさ」と主題歌「銀の龍の背に乗って」について言及されたという。

吉岡は「愛子さまが『吉岡さんの、フワッとした雰囲気はコトー先生みたいですね』って…さらにフワッとして、どこまでフワフワ飛んでいけるんだろう。本当に不思議な時間」と愛子さまとの会話を明かした。その上で「亡くなったおじいちゃん、歯医者さんなんですけど明日、お墓参りに行って今日のこと、報告できるなって…ご先祖様に自慢できるかなと」と笑みを浮かべた。

「Dr.コトー診療所」は、へき地医療の過酷さも1つのテーマだが、今日も医師不足から安定した地域医療の提供が困難な自治体が少なくない。この日の上映会は、そんな状況の中、へき地への医療提供を事業とする公益社団法人地域医療振興会に収益の一部を寄付する意図で、チャリティーとして開かれた。吉岡が演じた主人公コトーのモデルとして招待された瀬戸上医師は、17年の「第5回 赤ひげ大賞」を受賞した際の表彰式で当時、皇太子だった天皇陛下に拝謁(はいえつ)した経緯があり、製作サイドが天皇ご一家に行幸啓の願い出をした。

「Dr.コトー診療所」は、累計発行部数1200万部超の漫画家・山田貴敏氏の同名漫画を原作に、2003年(平15)にフジテレビ系で連続ドラマ第1期が放送され、最高視聴率22・3%。04年には特別編と「Dr.コトー診療所 2004」が、06年には連続ドラマ第2期が放送され、最高視聴率25・9を記録。それから16年ぶりの続編として、初めて映画化。ドラマシリーズでも演出を務めた中江功監督、脚本も連続ドラマ全作を執筆してきた吉田紀子氏と、スタッフが再集結した。

本土からフェリーで6時間かかる、西端の美しい島・志木那島に19年前、東京からやって来たコトーこと五島健助(吉岡)は、島のたった1人の医師として島民全ての命を背負ってきた。長い年月をかけて、島民との信頼関係を作り上げ、島にとってかけがえのない存在であり、家族となったコトーも52歳。数年前に結婚した看護師の星野彩佳(柴咲)も妊娠7カ月で、もうすぐ父親になる。島民の皆が「コトーがいるから大丈夫だろう」と思う穏やかな日々の中、志木那島も過疎高齢化が進行。島と近隣諸島との医療統合話が持ち上がり、島を出て拠点病院で働かないかと提案され、コトーは島の未来のためになると理解しながらも返事できずにいた。その中、猛烈な台風が島を直撃し、診療所が野戦病院と化した上、島の医療を支えてきたコトーにも病の影が忍び寄る物語。

吉岡と柴咲にとっては、天皇ご一家が出席しての上映会は初めてだったという。囲み取材の最後に、この日の上映会の俳優人生における位置付けについても質問が出た。吉岡は「俳優、やっていて良かったなぁって。あとはスタッフや出会ったキャストの方たちに感謝しかない。生きていると、こんなこと起こるんですね、というのが全て…何か笑っちゃって」と語った。柴咲は「キャリアとか、今まで考えずにここまで来たのもあるんですけど…より一層、自分の関わる作品に責任を持ちつつ、とことん、楽しんで表現したいと思い直せた気がします」と自らに言い聞かせるように語った。

16日の公開から27日までの12日間で興行収入(興収)11億円、動員83万人を突破した。