新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン三世)」が京都・南座で開催中だ。
言わずと知れたモンキー・パンチ原作の大人気漫画、アニメ。2023年12月に新作歌舞伎として、新橋演舞場で上演され、歌舞伎俳優の片岡愛之助(53)が怪盗・流白浪燦星を演じ、人気を博した。前作で尾上松也(40)が演じた大盗賊・石川五右衛門(石川五ェ門)役は今回、尾上右近(33)が引き継いだ。
愛之助の舞台に対する意気込みは多くの媒体で紹介されているので、ここでは右近について取り上げたい。
右近は公演前の取材会で「作っていく姿、過程を間近で見ていた。リスペクトも含めて松也さんが作ったものを踏襲しながら、自分なりに思うものも皆さんとご相談してやらせていただく形になる」と、前任の松也に敬意を表した上で、五右衛門を演じることへの思いを語った。
「知らない人はいない。僕らの世代でもルパン三世ファンはたくさんいる。僕らは歌舞伎の石川五右衛門の方がポピュラーですけど、一般的にはルパンの五ェ門の方が有名で、子どもの頃から不思議な感覚でした。そういう存在の五右衛門を演じられるのは不思議な感覚ですけど、皆さんが知っているキャラクターを自分がやるという責任感というのは、普段の歌舞伎の古典のお役とはまた違う緊張感がある」
曽祖父は6代目尾上菊五郎、祖父は昭和の映画スター鶴田浩二。7代目尾上菊五郎の元で役者修行を積んできた。自主公演「研の會」を主宰し、芸の研さんに励んでいるが、古典の演目とは違う新作歌舞伎ならではの責任感を感じている。
「伝統の中で感じる重圧というか責任の重さみたいなものを、古典で先人たちがやってきた役を自分がやらしてもらうときに感じますけど、みんなが知っている、お客さまから受ける責任感というのは、直に役者が感じる責任感の純度が高いものがあるなと思う。のるかそるかというドキドキ感は僕も分かる。自分なりにこうだと思う道を突き進まないと、やらしていただくからには自分が優柔不断ではなかなかお客さまには説得できない」。
それでも、「不安や重圧を、歌舞伎をやりながら感じられるのはうれしい」ともいう。
映画やドラマ、舞台など歌舞伎以外でも活躍が目立つ右近だが、「新劇やミュージカルに出させてもらったときは、裸の気持ちで行かないとまずいという緊張感がある。それを歌舞伎でやれるっていうのが、歌舞伎俳優としては一番幸せな試練。五右衛門という役を通じて味わえるのは本当に参加させていただきがいがある」と喜びを感じている。
歌舞伎俳優としての役者魂を熱く語ったかと思えば、一転、「ビジュアルは僕の方が似てる」とにやり。愛之助からも「五右衛門顔だよね」と言われ、「ハマるべきところにハマった感じ。松也さんを踏み台に」と笑った。
自身が感じる歌舞伎の魅力、そして、他のエンターテインメントとの親和性についても語った。
「歌舞伎はどこか道徳的なところがあって、良いとか悪いとかというよりは、思いや情みたいなものが伝わってくる作品がたくさんある。例えば、盗賊ものでも、泥棒だから悪い、もちろん悪いんだけど、その中に情とか関係性とかいろんなものが絡まって人間らしく描かれている。殺人を犯して花道を引っ込む役者に拍手がくるっておかしな話、悪人に称賛を送るわけだから。そういう文化芸術なんですけど、ルパンもまさしく、アニメーションと歌舞伎のリンク性って、人間らしさとかドラマ性に心が動かされておもしろいと感じる。歌舞伎の観点からいったら良いか悪いかじゃなくて、つまらないのが一番悪っていうのがあるかもしれないんですけど、アニメーションというのはエンタメとして一直線上につながっていると思う」。
映画「国宝」の大ヒットもあり、歌舞伎を見に行ってみたいという層は増えている。
「ルパンを楽しむという気持ちと歌舞伎を楽しむって気持ちを同時に浴びに来てほしい」。
公演は26日まで。ぜひ観にいっていただきたい。【阪口孝志】



