「人間の証明のテーマ」のヒットで知られる歌手ジョー山中(やまなか)さん(本名・山中明=やまなか・あきら)が7日午前6時56分、肺がんのため、神奈川県横須賀市の病院で死去した。64歳。横浜市出身。山中さんは7月から入院していたが、7日未明に容体が急変したという。昨年2月に肺がんが見つかり、同3月に自分の公式ホームページでがんを公表していた。

 昨年3月に肺がんを公表してから約1年半、病気と闘い続けてきた山中さんが天国に旅立った。関係者によると、最期は家族にみとられて安らかな表情だったという。

 山中さんは7月に入ってから横須賀市内の病院に入院した。それまでも入退院を繰り返す状態だったとされるが、7日未明に容体が急変したという。

 7月下旬には、一時は心肺停止状態となり、集中治療室(ICU)に入ったことが、関係者を通じて伝えられた。山中さんの知人に7月19日、山中さんの携帯電話からの着信が何度もあったとされ、翌20日以降、返事をしようと電話をかけてもつながらなかったという。同21日行われた俳優原田芳雄さんの通夜では、内田裕也(71)が「重体で大変なんだよ」と明かしていた。7月の入院後は予断を許さない状態だったとみられる。

 山中さんは、昨年2月に胸に痛みを感じ、検査の結果、肺がんが発見され、ステージ3と診断された。歌えなくなることを危ぶみ、手術はせずに、放射線治療と抗がん剤投与を受けていた。同3月には自分の公式ホームページに「戦いぬいて、皆さまの前で必ず歌える日が来ると信じて頑張ります」と記し、がんと闘う決意をファンに示した。

 がん発見当初の経過は順調で、同6月には退院し、自宅で療養していた。同8月には、山中さんを支援するライブが都内で行われ、自らも「スタンド・バイ・ミー」を歌い、スタッフ、観客を喜ばせた。今年に入っても、3月に東日本大震災の被災者のため、東京・渋谷の街に立ち、内田や近田春夫ら約20人と募金活動を行うなど、病気と闘いながらも積極的に支援活動を行ったばかりだった。

 山中さんは、68年にロックバンド、フラワー・トラベリン・バンドを結成し、ボーカルを担当。海外進出するバンドの草分けとして70年にカナダへ。東洋的サウンドと英語詞が合わさった独自の音楽性が高く評価された。73年にバンド活動を停止した後はソロで活躍。77年の映画「人間の証明」に出演するなど俳優活動も行い、西条八十の詩を英訳して歌った同映画の主題歌「人間の証明のテーマ」がヒットした。

 また、カンボジアやイラクなどを訪れ「今まで、いろんな人に助けてもらったお礼」と、難民救済などのボランティア活動も積極的に行っていた。