将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(16)が平成最後の対局を白星で終えた。24日、東京・千駄ケ谷の「将棋会館」で行われた第32期竜王戦4組準決勝で、高見泰地叡王(25)を下した。タイトル保持者の攻撃を粘り強く対応してかわし、局面をひっくり返した。藤井はこれで同組決勝進出を果たすと同時に、3組への昇級が確定。竜王戦ではデビュー以来3期連続の昇級を決めた。

平成最後の対局の最終盤になって勝利が見えた。高見の攻めのスピードが緩んだ瞬間を見逃さない。劣勢をはね返し、リードを広げて得意の終盤力で寄せ切った。準々決勝の中田宏樹八段戦に続いての逆転勝ち。「中盤に誤算があって形勢を損ねた。相手の攻め手順を軽視していた」と振り返った。これで竜王戦の予選はデビューから負け知らず。3期連続の昇級も決めた。「うれしく思います」と喜びをかみしめた。

公式棋戦の朝日杯で昨年1月の準々決勝で佐藤天彦名人、同年2月の準決勝で羽生善治竜王を撃破。今年の決勝では渡辺明棋王と現役タイトル保持者を倒している。

ただ、8大タイトル戦の挑戦権争いとなると話は別。昨年9月の棋王戦挑戦者決定トーナメント菅井竜也王位、同年11月の叡王戦本戦1回戦で斎藤慎太郎王座に屈し、タイトル戦初挑戦の道を断たれている。彼らは高見と同じ20代半ば。これから充実期を迎える若手の先輩に立ちはだかられている。今回、同年代のトップ棋士を下し、進歩した。

竜王戦といえば、元号が平成に改まった1989年に、羽生善治が初タイトルを獲得している。そこから「羽生時代」が幕を開けた。

令和になって歴史が繰り返されるのか? 藤井に期待がかかる。「新しい時代に活躍できるようにしたい」と張り切る。挑戦者決定トーナメントに出場するには、4組優勝が絶対条件。「(決勝でも)いい将棋を指したい」。その言葉には力がこもっていた。【赤塚辰浩】