就任から2カ月が過ぎ、菅義偉首相の「失速感」が止まらない。

新型コロナウイルス対策では、肝いり政策「Go Toトラベル」の一時停止を決めたが、追い込まれた判断で対応は後手後手。提案した「静かなマスク会食」にも共感は広がらず、日本学術会議任命拒否問題もこじらせたままだ。首相の専権事項のはずの衆院解散時期をめぐっても、好き勝手な臆測が飛び交う。Go(誤)算続きの2カ月を、どう打開していくのか。

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8年ぶりの政権交代で誕生し、就任2カ月が過ぎた菅首相だが、政権運営はコロナ禍で厳しさを増している。首相の肝いりで、事業継続にこだわりをみせてきたトラベルやイートなど「Go Toキャンペーン」も21日、ついに見直し表明に追い込まれた。

しかも首相のリーダーシップではなく、感染拡大への危機感を強める専門家からの要請が発端。首相は20日の参院本会議でGo Toの意義を訴えたばかりで、急転直下の事態だった。

一連のコロナ対応で、菅首相が指導力を発揮してきたとは言いがたい。一斉休校やアベノマスクなど、良くも悪くも打つ手に「首相の顔」が見えた安倍晋三前首相とは、対照的だ。首相は感染拡大防止策の一環で19日、食事中のマスク着用を伴う「静かにマスク会食」の励行を提案したが、国民の共感を得たと言うにはほど遠い。女優石田ゆり子がインスタグラムに「そんなことするくらいなら黙って食べます」とつづり、話題になったほど。国民の心には響いていない。

首相の誤算は、Go Toにとどまらない。日本学術会議の任命拒否問題でも、説明のまずさから収束できない状態が続く。野党の追及は収まらず「いらぬ体力を奪われている」(政界関係者)。口を開いても発信力への不安からか、ぶら下がり取材に応じるだけで記者会見も開かない。21日にGo To見直しのタイミングの遅れを問われた際は、答えずに立ち去り、「逃げ」の姿勢を印象づける結果にもなった。

行き詰まり感が目立つ首相は25日、衆参両院の予算委員会で野党の追及を受ける。野党側はGo Toの後手後手対応などをただす構えだが、今月上旬の予算委の審議で首相は、答弁書棒読みや正面から答えない内容が多く、「支離滅裂で論理破綻」(立憲民主党の辻元清美衆院議員)と酷評され、自民党内でも「がっかり」と失望の声が出た。感染拡大は収束の見通しが立っておらず、首相にはいばらの道が続きそうだ。