政府は28日、新型コロナ感染症対策本部会合で北海道、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、福岡の9都道府県で31日まで延長されている緊急事態宣言を6月20日まで再延長することを決めた。会見では東京五輪・パラリンピックの開催可否について質問が相次いだが、菅義偉首相は開催を主張し、明確な回答を避けた。開催を実現する目新しい具体策も説明されず、「空転」を続けた。

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金曜日の定番となった政府の新型コロナ感染症対策決定と発表だが、菅首相の記者会見の内容も、いつも変わらぬ「定番化」していた。「度重なる延長は大変に心苦しい限りであります」と、いつも通りに陳謝した。東京五輪・パラリンピックについては「多くの方々から不安や懸念の声があることは承知している」とした上で「安全安心の大会に向けて取り組みを進めている」と、毎回おなじみセリフを繰り返した。

政府は小刻みに延長策を繰り返して、しのいできたが、五輪開催の議論は高まり、中止を求める声も広がり続けている。解除期限の6月20日には開幕まで残り約1カ月。開催可否を判断するデッドラインだ。会見では五輪に関する質問が相次いだ。「緊急事態宣言下でも開催可能か」と問われたが、いつも通り、明確に答えず、「テスト大会も国内で4回開催しています。こうしたことに配慮して取り組んでいる」と的外れに終始し、記者とのやりとりは空回りを続けた。

一方で観客を入れて五輪を開催する可能性を示唆した。プロ野球やJリーグが入場規制の中で開催されていることを例に「感染対策をした上で行っていることも事実。今、5000人規模で宣言下でもやっている。対応できると思っている」とも主張した。

新規感染者の抑え込むには至らず、医療体制は切迫を続ける中で、緊急事態宣言は再延長となった。だが再延長でも、酒類やカラオケ設備を提供する飲食店への休業要請や、酒類を出さない店への時短営業の要請などは従来通りで、新たな規制強化はない。東京や大阪では宣言が約2カ月におよぶ。緊張感は薄れ、宣言慣れした空気が広がるばかり。緊急事態宣言下での「強行開催」もあり得るほど菅首相や政府は開催へ向けて前傾姿勢を強めている。【大上悟】