歴史的一戦の裏側に迫る「G1ヒストリア」。第3回は、怪物エピファネイアが念願のG1初制覇を果たした13年菊花賞にスポットを当てる。圧倒的なポテンシャルを持ちながら、春のクラシックでは皐月賞、ダービーとも2着。その悔しさを晴らそうと臨んだ秋のラスト1冠を圧勝した。並外れたパワーを制御するため、陣営が重ねた努力が実を結んだ。

13年の菊花賞でエピファネイアは5馬身差の圧勝
13年の菊花賞でエピファネイアは5馬身差の圧勝

特に折り合いが重要とされる3000メートルの長距離戦。エピファネイアが単勝1・6倍の圧倒的人気にこたえられるかどうかは、その点にかかっていた。

スタートから1周目のホームストレートまで、パワフルな鹿毛馬は終始引っかかり気味。だが、スタンド前で落ち着くと、その後は納得したように折り合った。2度目の直線に向いても福永騎手は手綱を持ったまま。ラスト300メートルで追い出した時、勝負は決した。

2着サトノノブレスに5馬身差の圧勝。それでも福永騎手は派手なガッツポーズや喜びは見せず、レース後には「これですべてを取り返したとは思っていません」と、春のクラシックを勝てなかった反省まで口にした。それほどエピファネイアのポテンシャルは圧倒的だった。

 
 

母は05年にオークスとアメリカンオークスを制した名牝シーザリオ。母子2代にわたって担当した鈴木裕幸助手(45=現小林真也厩舎)は桁違いの馬力に手を焼いていた。「馬房内で動きを制限する太いゴムを何度も引きちぎった。調教でも、まったく抑えられない。あれほどパワーのある馬は他に知りません」。

調教に乗ることが多かった辻野泰之助手(41=現調教師)は「電柱を引っ張っているようだった」と振り返る。「力が強いし気も強い。調教に乗るのが怖かった。これまでそんな馬はあの馬だけです」。鈴木助手、辻野助手が異口同音に話すのが「人間の無力さを感じた」という意味のこと。福永騎手は乗りこなすために、肉体改造を行ったほどだ。

この菊花賞後もエピファネイアは一進一退を繰り返した。「僕らは手からこぼれる砂を、なんとかすくい上げるようなことを繰り返していた」と鈴木助手は怪物のような馬と向き合った日々を表現する。生涯最高のパフォーマンスは、強豪のジャスタウェイを4馬身ちぎった14年のジャパンC。今はその身体能力を産駒に伝えている。【岡本光男】

13年の菊花賞を制したエピファネイア。左端は福永騎手
13年の菊花賞を制したエピファネイア。左端は福永騎手

◆エピファネイア 2010年2月11日、ノーザンファーム(北海道安平町)生産。父シンボリクリスエス、母シーザリオ(母の父スペシャルウィーク)。牡、鹿毛。馬主はキャロットファーム。栗東・角居勝彦厩舎所属。通算14戦6勝。重賞4勝、うちG1は13年菊花賞、14年ジャパンCの2勝。半弟リオンディーズ(15年朝日杯FS)、サートゥルナーリア(19年皐月賞など)もG1馬。主な産駒は20年の3冠牝馬デアリングタクト、昨年の年度代表馬エフフォーリア。