男子100メートルバタフライ(視覚障害S11)で、今季世界ランキング1位の木村敬一(28=東京ガス)がアジア新の1分1秒35をマークし、今季世界2位のライバル富田宇宙(29=日体大大学院)を制した。

予選を1分2秒38の大会新で泳いだ木村は、決勝でさらにピッチを上げ、昨年11月の日本選手権で記録した自らの記録、1分1秒45を上回った。富田は予選が1分4秒62、決勝は1分4秒11だった。

木村は言った。「自己ベストは最低限で、もう少し高いレベルを狙ったんですが、少し力んだかな。でも、宇宙さんが記録を上げてきているので、僕の励みになっています」。これに応じるように富田も「木村君は目標にし、尊敬している選手。彼がいい記録を出したので僕も本当にうれしかったです」。

現在、木村が3、富田が1つの世界記録を保持している。今季世界ランキング1位はともに5種目ずつ。自由形、バタフライ、個人メドレーで世界トップレベルの競り合いを続けている。8月のパンパシフィック選手権(オーストラリア)では木村が50自、100平、同バタ、200個人メドレーの4冠。富田は50自、100バタでは木村に敗れて2位も、100、400自を制している。

木村が今春から練習拠点を米国に移したことで接点は少なくなったが、日本代表合宿や大会で顔を合わせるたびに情報を交換。富田が「木村君からアメリカのトレーニング法や練習環境、選手のことを聞くたびに刺激になるし、勉強になります」という通り、お互いを高め合うライバルであり、親友同士でもある。

リオで4つのメダルを手にした木村は、パラリンピックに3大会連続出場のキャリアを誇る。一方の富田は大学時代から競技ダンスに打ち込み、本格的に水泳を始めたのは社会人になってから。網膜色素変性症が進行したことで昨年、クラスがS13(弱視)からS11(全盲)に変更になり、一気に世界のトップ戦線に浮上してきた。大きな国際大会の経験も少ない。

10月のジャカルタ・アジアパラ大会では木村が6種目、富田が5種目にエントリーしている。そのうち直接対決は4種目。ともに「金メダルと自己ベスト」を目標に掲げる2人のデッドヒートは、20年東京へ向かって続いていく。【小堀泰男】