フットボール金融論 ~レアル・マドリードMBA卒・酒井浩之~

ついに南野がリバプールに加入!その経営状況とは

2019年末に日本にとても大きなニュースが舞い込んできました。なんと、あのリバプールに南野選手が移籍。更にその後SNSを通して流ちょうなドイツ語で監督とやり取りするシーンを目にし、改めて自分自身が強く感じている“操ることができる言語がある”ということの大きさを感じました。

FA杯エバートン戦でデビューしたリバプール南野拓実(1月5日、撮影・PIKO)
FA杯エバートン戦でデビューしたリバプール南野拓実(1月5日、撮影・PIKO)

さて、そのリバプールですが、現地では全然チケットが手に入らず、さらに2020年に入り、その難しさはさらに増しているような状況であることを耳にしたり、ここぞとばかりに日本企業に対してのスポンサー・セールスに力を入れているといったニュースが飛び交っており、獲得した選手をどのようにマーケティングに活かすかなどは本当にスポンサービジネスの腕の見せどころとなります。今回はそのリバプールの財務状況をのぞいてみたいと思います。

レアル・マドリードもそうでしたが、欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝という実績が大きく響いていることに間違いはありません。(前年は決勝での敗退ですから、2大会に渡って決勝進出)その優勝賞金(勝利給のみ)を計算すると、7435万ユーロということになるので、日本円で約90億円強という大きな収入が計算されます。さらにこれにマーケットプール金が分配されますから、約1億ユーロ(約122億円)近くの純利益の上積みがあると予測できます。公式資料を読み解くと17-18シーズンの資料が開示されていたので、まずはCL優勝前年度の数字からひも解いてみましょう。

デロイトによると、レアル・マドリードが3連覇して終わった17-18シーズンはそのレアル・マドリードの総収入は約7億5千万ユーロ(約1000億円弱)に対し、リバプールの収入は約5億1千万ユーロ(約630億円)でした。内訳で見てみると、約17.8%が入場収入、約48.9%が放映権収入、約33.2%が商業的な収入(スポンサーやグッズ収入などのマーケティング収入)となっております。この内訳バランスはプレミアリーグの特徴的な部分でもありますが、放映権収入料の割合が多く、約50%を占めています。大半のプレミアリーグ上位チームも同じように50%近くの数字を持っていることから、放映権料収入の割合が改めて大きいことがわかります。ちなみにスペインはレアル・マドリード、バルセロナで約30%強、フランスではパリ・サンジェルマンで20%強という数字になります。

一方でその分、売り上げ構成比率がいまいち小さい数字に見えてしまう部分がグッズ収入とチケット収入。スペインの2強はグッズ収入やチケット収入比率が比較的高く、特にチケット収入はスペイン2強が1億4千万ユーロ(約170億円)近く売り上げていることから、それに対して9千万ユーロ(約110億円)ほどであることを考えると、当然これには席数の絶対的な違いがあるとはいえ(リバプールは5万席強に対し、レアル、バルサは、それぞれ8万、10万席近くの座席数がある)人気度やチケットの売れ筋具合からすると「もっと取れるだろう」という判断が上層部でなされていてもおかしくはないのかもしれません。リバプール・アンフィールド建て替えの声があるのはこの点と大きく関連していると私は見ています。建て替えることでまず絶対的な席数が増加されるばかりか、VIP席の増量、スポンサーに対するホスピタリティーのアップなどチケット関連での収入が増えるのは目に見えており、特に調子が良い時ほどそこに目がいってしまいがちだけにもどかしい気分になるのではないでしょうか。トッテナムは約3万6千席だった座席数をスタジアム改築により6万席まで増やしております。さらに改築によってチケット価格も再設定できることから、多くのクラブがさらなる収入を目論んでテコ入れを図る部分でもあります。とは言っても、公式HPによれば前年よりも130億円近い収入のアップがあり、これはとても大きなことです(前年のCL決勝進出が大きく影響)。ファイナンシャル部分で一番大切な数字がなんといっても利益。クラブのこうした数字はとても見えにくい部分でもあります。なぜかというと、利益が出ていないケースがほとんどですので、当然よくないことは隠す傾向にありますが、昨今のリバプールはそうではないようです。2017年の利益は3897万1千ポンドとあり、約56億円。さらにこの数字が2018年には1億6百万6千ポンドと増加しており、これは日本円で約153億7000万円になっております。さらにコウチーニョの200億円近い移籍金もあったり…と考えると、多くの選手を補強している現実は納得がいくものです。1980年代のイングランドをほぼ支配していたと言っても過言ではないリバプール。29年ぶりのリーグ制覇なるか、そして40年の時を経てリバプールのさらなる黄金時代が築かれるのか。その瞬間に日本人が絡むとは、という感慨深い気持ちが込み上げると同時に経営手腕の見事さに改めて驚かされたと言うほかありません。

イングランド人の育成事情が気になるところではありますが、さらなる補強の余地を考えると、リバプールだけでなく米大リーグのレッドソックスを傘下におさめるフェンウェイグループの手腕はさすがというところでしょうか。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)

◆酒井浩之(さかい・ひろゆき)1979年8月24日、愛知県生まれ。幼少時よりサッカーに打ち込み、大学卒業後は広告代理店やスポーツメーカーに勤務。2015年3月にレアル・マドリード大学院スポーツマネジメントMBAコースに日本人として初めて合格。卒業後、レアル・マドリードへ同コースから唯一選出され入社。17年6月退社。現在はスペインと日本を行き来しながらスポーツビジネスのコンサルティングなどを手掛けている。

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