今、日本サッカー界をけん引する男、MF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)を最初に日本代表のレギュラーに据えた指揮官が、中国にいる。10年W杯南アフリカ大会で日本を決勝トーナメント進出に導き、現在は中国スーパーリーグ杭州緑城の指揮を執る岡田武史監督(56)。W杯で本田を1トップに抜てきした岡田監督が、日刊スポーツに対して「本田圭佑」を語っていた。

 ピッチ内外で絶大な影響力を誇る本田。プレーで、言葉で、そして何よりも存在感で日本代表を引っ張っている。その本田を代表に定着させ、最終的にレギュラーで起用した岡田監督が今春、穏やかな表情で「本田圭佑」を語っていた。

 岡田監督

 本田はビッグマウスとか言われるけど、あれは自分へプレッシャーをかけているだけ。そういう意味で強い男だと思っている。なかなかできることじゃない。自分のポリシーを貫ける。ただ、エゴではなく、チームがどうしたら勝てるか-。それを考えることができるんだよ。

 印象に残っている会話がある。09年9月の欧州遠征。試合中に当時の司令塔MF中村俊輔と本田の間で生じた「FK争奪戦」。セットプレーの不動のキッカーとして君臨していた中村俊に、本田はあえてキッカーを申し出た。一見するとエゴ丸出しとも映る行動は周囲に緊張感をもたらした。

 岡田監督

 実際、あの時の遠征中に本田と話したんだけど、「(中村)俊さんが(定位置の)右サイドでプレーしている以上、チームのためには僕は(得意の右サイドではなく)左サイドでプレーできないとダメなんですよね。そうすることでチームがうまく回る。分かってるんです」って言っていた。一見、言動が独り歩きしがちなんだけど、チームのことをよく見て、チームとしてどうすればいいか、その中で自分は何ができるか。それを考えられるのが本田なんだよ。

 10年4月。ロシアに赴き、CSKAモスクワの試合を視察した。本田の体幹が格段に強くなっていることに手応えを感じ、日本代表の柱に据えようと決意した瞬間だった。その際、体幹が強くなった理由を本田自身に尋ねたという。

 岡田監督

 本田は体は強いんだけど、当たられると(バランスを崩して)ボールを奪われることが多かった。でも、それがなくなっていた。本人に聞いたら「こっちでは体幹をすごく鍛えられる。今はテレビを見る時もバランスボールに乗っています」って。たいしたヤツだと思った。

 強烈な個性と実力で日本を引っ張っている背番号4。岡田監督もそんな本田への期待を隠さなかった。

 岡田監督

 本田は自分自身に高い要求をしている。同時にチームのことも常に考えている。俺が俺がっていう感じで自分の意見を周りに押しつけるようなタイプじゃないんだよ。そこがすごく大事。彼の良いところだと思う。そして、彼の高みを目指す姿勢は間違いなくチームにいい影響を与えると思う。(本田個人に対しては)そろそろロシアを出て他の国でプレーする本田を見たいね。彼なら絶対やれると思うからね。【取材・構成=菅家大輔】