点差以上の完敗に、鹿島イレブンはぼうぜんとするばかりだった。前半は神戸相手に手も足も出ず、後半は盛り返したがゴールが遠かった。試合後、この日がラストマッチだった大岩監督は選手1人1人と抱擁を交わして回り、涙をぬぐう選手の姿もあった。

シーズン当初に掲げた「4冠」は、今季は高い壁だった。若手の欧州挑戦に寛容な鹿島では、MF柴崎の海外挑戦などもあり、優勝した3年前の天皇杯制覇時から先発10人が入れ替わった。今夏はMF安部ら3選手が欧州へ渡り、過密日程も影響して負傷者が続出した。指揮官は選手をコンバートしたり、新人のMF名古を積極起用するなど、うまく選手をローテーションしてリーグ終盤まで優勝争いに残ってきた。

それでも終わってみれば無冠。最後のところで勝ちきる力が足りなかった。1月28日のACLプレーオフから始まる来季は、東京五輪開催もあって今季以上の過密日程が予想される。鈴木満フットボール・ダイレクターは来季に向けて「(これまでは)少し選手層を厚くする編成だったが、リフォームでは間に合わないところに来ている。基礎だけを残して家を建て替えようかな、と思っている」と話す。より現実的に全タイトルを狙えるよう、選手全体の底上げを図る意向だ。

鹿島はジーコジャパンでもおなじみの4-4-2を採用してきたが、この日は後半途中から3バックに変更した。練習では取り組んでいないフォーメーションだったが、システム変更後はボールを保持する時間帯が圧倒的に増えた。鈴木氏は「ブラジル流を重視しながらやってきたが、今のサッカーは欧州が中心。そういうものも取り入れてチーム作りをやっていかないと立ち遅れる」と言った。良き伝統を残しながら、時代にあったサッカーへ。来季が変革の時かもしれない。【杉山理紗】