ヴィッセル神戸のDF酒井高徳(29)に新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出たことを受け、一夜明けた3月31日、他クラブにも衝撃が広がっている。

あるクラブの強化関係者は「酒井は非常にまじめでストイックな選手。そんな人物が感染したことに、驚いている」と話した。神戸の三浦淳寛スポーツダイレクターが、30日の会見で「普段から模範的な選手」と発言したように、酒井の人物評は業界ではほぼ同じだ。当事者やクラブ、その周囲の努力だけでは、かなわない敵との戦いに突入しているかもしれない。

Jリーグで最初の感染者が出たことで、今後にどんな影響が出てくるのか。公式戦の延期が続いているJリーグだが、J1は5月9日の再開を目標にしている。多くの関係者は「こればかりは分からない」と口をそろえるが、共通した1つの予感がある。

別のクラブ関係者は「プロ野球も一定期間、練習試合を中止にしたように、Jリーグにも同じような流れになる可能性がある。実際にわれわれのクラブも、現時点で練習試合を外部と積極的に組みたいとは思わない」と証言する。激しい接触プレーが避けられない競技だけに、外部チームとの対戦には、いくら練習試合とはいえ過敏にならざるをえないという。

Jリーグのチームは通常、シーズン中であれば公式戦がない期間でも1週間に1度、練習試合を入れるのが慣例。実戦感覚が大事だからだ。ましてやJ1が5月9日に再開を目指す場合、4月中旬からは練習試合はどのクラブにとっても必須になる。それが組みにくいとなれば、公式戦再開の土台さえ揺るがしかねない。

さらに別のクラブ関係者は「仮に練習試合をする場合でも、開催場所に細心の注意を払うことになる。西日本でいえば、大阪府や兵庫県など感染者が多い地域では試合は避けたい。リスクを考えて行動するしかない」と断言する。

現在は神戸が11連休の真っ最中で、4月7日から練習を再開予定だったが、感染者の発生で予断は許さない。新たな感染者が出れば、練習再開が白紙に戻る可能性がある。

別のクラブでは、これまで週に1、2度、報道陣にだけ公開していた練習も、4月からは完全非公開とし、取材も当面できないようにする方向だという。外部との接触を避けるためだ。

本来なら公式戦再開に向け、選手の実戦や世間への露出を増やしていく時期に、それさえできない状況になりつつある。

Jリーグの臨時実行委員会は4月1日に開かれ、多くの議題が話し合われる予定だ。【横田和幸】