3位となり記念撮影するベルギーの選手たち(撮影・江口和貴)
3位となり記念撮影するベルギーの選手たち(撮影・江口和貴)

 「メダルだあ!」「表彰台だあ!」と五輪で大騒ぎになる日本では理解しがたいが、世界的にはW杯の3位決定戦にあまり重きは置かれない。「敗者」同士の消化試合、メンバーを大幅に入れ替え「やる気あんのか」と言いたくなる試合もあった。そういう「緩さ」も楽しみではあるのだが。

 賞金も3位が2400万ドル(約26億4000万円)で、4位より200万ドル高いだけ。優勝(3800万ドル)と準優勝(2800万ドル)は1000万ドル、ベスト8と4位も600万ドル違うというのに。収益確保のために中2日の試合を強いるFIFAも「まあ、適当にやっといてよ」と思っているのかもしれない。

 それでも、ベルギー対イングランドは白熱した。1次リーグの最終戦で真剣な「消化試合」をしたが、3決も見ごたえがあった。ベルギーが先制した後は、若さのままに愚直に同点を目指してゴール前にボールを入れるイングランドとボールを奪ってからのロングカウンターで沸かせるベルギーとの対比で楽しめた。

 ベルギーの攻撃は見事だった。デブルイネがパスを受けて前を向くと、左右を追いかけるように選手が攻め上がる。ドリブルでDFを中央に集め、複数ある選択肢から絶妙パス。背番号7がボールを持つと、ゴールの臭いがした。ベルギーのカウンターの後、国際映像が真上からのリプレーを流すほど芸術的だった。

左からデブルイネ、アザール、ルカク
左からデブルイネ、アザール、ルカク

 デブルイネもアザールもルカクも、プレミアリーグのトップスターだ。同リーグの「紅白戦」だったイングランド戦で「格」の違いを見せるのは当然だった。ただ、違ったのは個の力だけではなく、チームとしての完成度。相手に応じて自在に戦術を変え、それを選手が完璧に遂行した。

 代表でクラブ以上のパフォーマンスを見せるのは難しい。限られた時間で、他の選手との連係を磨くのも難しい。しかし、ベルギー選手たちはクラブでのパフォーマンスと同じ、いやそれ以上にキレのあるプレーをみせた。個性の強い選手が互いの持ち味を生かし、より強い輝きを放った。

 「クラブの方が代表より強い」のはサッカー界の常識でもある。戦術的にもクラブの方が進んでいる。ただ、国歌を歌い、国のために結束力を高め、クラブ以上に高いレベルで戦う試合もある。今大会のベルギーであり、他に挙げるとしたら日本だった。長い歴史で培われたサッカー観や国民性の違いが出るから「代表は面白い」。W杯が熱狂される理由もそこにある。【荻島弘一編集委員】