ワールドカップ・ロシア大会が近づく中、イタリアではつらい現実が待っていた。出場権を逃したことで、1億ユーロ(約130億円)を超えるであろう経済損失を被ると報じられている。過去4回の優勝を誇る強豪国がW杯に出ないのは60年ぶりで、半数以上の国民が“イタリアがいないW杯”を初体験することに。4日(日本時間5日)にはやはりW杯に出ないオランダと親善試合を行い、結果も1-1とシブ~いものだった。
伊紙イル・メッサジェーロによると、損失のうち大きいのはスポンサー企業からの協賛金4300万ユーロ(約55億9000万円)、テレビ放送権料2600万ユーロ(約33億8000万円)という。さらにFIFAからの賞金やスポンサーからのボーナスもなくなる。イタリア・サッカー協会をはじめとする「カルチョ界」にとって、ロシアに行けば得られるはずだった収入は、約1億ユーロになる可能性があったと試算されている。
ほかにも経済効果への悪影響がある。「宅配ピザの売り上げが落ちる」と予想されている。イタリアではW杯を自宅でテレビ観戦する時、バルコニーに国旗を掲げ、友人らを招いて宅配ピザを注文し、ビールを飲みながらワイワイやるのが定番。よって今夏は宅配ピザの需要が“本来のもくろみ”より少なくなるというわけだ。ということはビールの売り上げも…。
W杯の試合中はみんなテレビに夢中、大通りから人も車も消えてひっそりとなるもの。その反動か、勝利の後は街中に車やバイクがあふれ、夜通し祝いの宴が続くものだった。興奮したファンによる歴史的建造物の破損も相次いだ。そのため各市役所はW杯前には建造物を守る囲いなどを設置してきた。だが、今年はその必要がない。お役所のお金が動かないのも経済効果としてはマイナスだ。
当然、遠路ロシアまで応援に出かけるサポーターもいないから、旅行業界も大打撃だろう。
今回のW杯期間中の反応は2通りに分かれそうだ。一方は自国が出なくとも、応援するチームを決めてサッカーを楽しむ派。他方はイタリアのいないW杯の存在を無視し、バカンスを決め込むという。
伊紙ガゼッタ・デロ・スポルトでは毎回W杯には12人ほどの記者を現地派遣していた。だが、今回は5、6人。それも試合そのものより、移籍情報に比重を置く取材となる。同時に同紙電子版のアンケート「どこの国を応援するか?」の答えで、意外に人気があったのがアイスランドだった。長年好敵手だったフランスやドイツより、初出場の小国の方が好感が持てるというわけか。この結果を受けて同紙はアイスランド代表に密着取材する予定という。(波平千種通信員)