ロシア政府系テレビ「第1チャンネル」が17日にサッカーのワールドカップ(W杯)の試合を中継した際、解説役の前ロシア代表監督スルツキ氏が冗談のつもりでプーチン大統領の政敵ナワリヌイ氏の名前に言及した。スルツキ氏はその後の試合中継に出演しておらず、政権の逆鱗(げきりん)に触れ、解説役から外されたとの臆測が出ている。

 ナワリヌイ氏はプーチン政権の腐敗を告発し、プーチン氏の退任を求める大規模なデモを主導してきた。プーチン氏はナワリヌイ氏の名を呼ぶのを避けるほど嫌悪している。政権の統制下にあるテレビ局もナワリヌイ氏の言動を無視し、言及するのは事実上タブーとなっている。

 17日のドイツ-メキシコ戦の中継で、別の出演者がナワリヌイ氏の語源となった形容詞を使って実況したことに引っ掛け、スルツキ氏は「ナワリヌイはサッカーをするのか? それは見ものだな」と冗談を飛ばし、一瞬の沈黙が広がった。

 ナワリヌイ氏は「その瞬間、検閲が崩壊した」と皮肉を込めてツイッターに書き込んだ。

 スルツキ氏はロイター通信に対し、W杯中継に出演することはもうないと説明。オランダのチームの監督として仕事をするため、ロシアを離れるのが理由だとしている。