ベルギーはパナマを3-0、チュニジアを5-2で下し、2連勝で1次リーグ突破を決めている。その強さの秘密を日本協会の元技術委員長でJ2山口の霜田正浩監督(51)に聞いた。同国1部シントトロイデンで約半年間、コーチを務めて昨年末に帰国。現地で感心したという育成システムについて帰国時に聞いた話をまとめた。欧州5大リーグへ選手を供給し「欧州のショールーム」とも呼ばれる同国リーグのシステムは、Jクラブにも大きなヒントとなる。
まず、移籍に関する固定観念を捨てることだ。ベルギーは毎シーズン、アンデルレヒトやゲンク、ヘントなどトップ5クラブがしっかり上位グループを構築し、他のクラブがそれに挑む構図になっている。他のクラブは選手を発掘し育てる。可能性のある選手はたとえ16歳でも19歳のチーム、さらにトップのセカンドチームに入れてプレーさせる。可能性が見いだされた選手は、ユース所属でも、その5クラブに移籍させる。
そこで移籍金が1~2億円が発生する。得た金をチームの運用資金、育成費用に充てる。トップ5クラブは、その選手を戦力としてもだが、欧州ビッグ5のリーグ(プレミア、ブンデス、セリエA、スペイン、フランス)に売ることを考える。それにより、自然と国内リーグが潤い、欧州内での競争力も高まる。
ベルギー代表エースFWルカクを例に挙げてみよう。アンデルレヒトは彼をリールセからわずかな金額で買い、ユースやトップチームで育てた後、5年後の18歳にはチェルシーに約20億円で売った。アンデルレヒトの人と話す機会があった。「まさか何十倍で売れるとは思わなかった。その金でユースのトレーニング設備を充実させ、いい指導者を呼んで若手を育てて、同時に他のクラブからまたいい若手を獲得する資金にも充てている」という。2匹目、3匹目のドジョウを常に探し求めている。
ルカクを筆頭に、E・アザール(チェルシー)、MFデブルイネ(マンチェスターC)らの活躍で、さらに欧州ビッグ5リーグからの関心は増えた。一方、Jはどうか。ユース所属選手の移籍自体、あまり考えられていない。有望選手を移籍させ、欧州リーグなどに高く売ることも考えない。戦力としての補強が主な目的で、その先のことを考える戦略的なシステムはない。
ベルギーとは立地条件や文化なども違って、必ずしも同じ道は歩めないかもしれない。しかしユース年代の移籍の活性化は、思考の変換でできる。「青田買い」の批判を受けることもあるだろう。各クラブの経営方針がそれぞれ違うように、各クラブのスタンスが同じ方向を向かなくてもいい。J2でもJ3でも、育成型クラブが成功すれば、それに追随するクラブが出てくることもある。
現在、日本協会は「育成日本復活」を目指している。これは各年代の代表強化だけを指しているとは限らない。Jクラブ、さらに街の小さいクラブが目指す方向ではないだろうか。(J2山口監督・霜田正浩)



