冬季五輪の新しい「顔」ともいえるスノーボード競技が15日に終わった。超大技で金メダルを獲得した男子ハーフパイプ(HP)の平野歩夢、5大会前の転倒を2冠で「回収」した女子スノーボードクロスのジャコベリス(米国)、11種目は、存分に楽しめた。
15日の女子ビッグエア決勝、岩渕麗楽が最終3回目に縦に3回転する「トリプルアンダーフリップ」に挑んだ。失敗したものの、他の選手たちが駆け寄った。女子の成功者はなく、挑戦することもなかた超大技への挑戦が賞賛された。
昨夏の東京五輪スケートボード女子パークを思い出す。大技に挑んで失敗した岡本壁優をライバルが肩車したシーンと重なる。「仲間同士で称(たた)え合う」のはスノボでは以前から見られた光景だが、東京五輪の影響でさらに印象が強くなた。
多くの五輪競技は、勝つことが目標になる。「勝つことがすべて」とはいわないが、多くは勝つために努力する。男子サッカーなど一部を除けば、最終的な目標は「五輪の金メダル」。ところが、スノボやスケボーなどは、それほど「勝つこと」に重きを置かない。
似たカルチャーを持つBMXフリースタイルの中村輪夢は「相手に勝つことより、一緒に大会を盛り上げるのが楽しい」と話す。もちろん、勝つことも大事だし、金メダル獲得も目標ではある。ただ、そこに必要以上にフォーカスはしていない。決してきれいごとではなく、彼らにとって大会の本質は「勝つこと」より「楽しむ」ことにある。
スノボやスケボーなどでは、コンテスト(大会)がすべてではない。というよりも、大会は一部でしかない。スノボではバックカントリー(整備されていない雪山)などで、スケボーは街中で、映像を残すことも大事。映像が彼らの個性であり、それが使われ、スポンサーがつく。プロとしては大会以上に大切だ。
東京五輪金メダルの堀米優斗は「ビデオパート(映像)にも力を入れたい」と話したし、平野歩夢はパイプだけでなくバックカントリーも滑る。若い時に大会に出て、その後映像に転向するケースも多い。スケボーの第一人者でテレビ解説の「ゴン攻め」でも有名になった瀬尻稜は東京五輪での金メダルも期待されていたが「もう、卒業しましたから」と笑った。
五輪に出るには国内競技団体に選手登録をし、強化選手に指定され、JOCの規約を守るなどさまざまな制約を受ける。大会で勝つための技を練習し、勝つための戦略を練ることも必要。選考のため、出たくもない大会に出なければならない。さらに「国を背負う」覚悟もいる。自由が束縛されると考えるのも分かる。
大会ではなく自由に表現し、映像を残すこともスノボやスケボーにとっては大切なこと。「五輪」を頂点とした山しかない競技では考えにくいが、スノボやスケボー、さらにサーフィンやBMXには山が2つ、いやいくつもある。ショーン・ホワイトは五輪で成功したが、五輪に背を向けながらも高度な滑りをし、大金を稼ぎ、誰からも尊敬されるスノーボーダーやスケートボーダーは数多い。
1998年長野大会から五輪競技になっているスノボは、他のエクストリームスポーツに比べて五輪では先輩。今、活躍している選手は「小さい頃から金メダルを目標にしてきた」というように、子供のころから五輪がある。東京五輪からのスケボーなどと考え方は少し違うかもしれないが、今も根っこに「勝つことだけじゃない」はあった。
東京五輪スケボー日本代表監督の西川隆氏は「スノボもスケボーも同じようなカルチャーですから」と話す。元プロスノーボーダーで、日本を代表して国際大会にも出ていた「二刀流」だけに、説得力がある。
もちろん「選手同士が称え合う」ことや「勝つことだけがすべてではない」ことだけが「カルチャー」ではない。歴史的な成り立ちから環境、音楽やファッションとの関係など、まだまだ奥は深い。ただ、その一部が五輪に大きなインパクトを与えていることだけは間違いない。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム 「OGGIのOh! Olympic」)



