世界ランキング11位のラグビー日本代表が25日(日本時間26日)、フランス・ナンテールで同8位のフランス代表とのテストマッチに臨む。40歳まで現役を目指す、フッカー堀江翔太(31=パナソニック)は徹底した食事管理と肉体改造に取り組み「鋼の肉体」で代表FWを支える。30代に突入してパフォーマンス向上と疲労回復効果を目的としたアンチエイジングを追求する“兄貴”の試みに迫った。【取材・構成=峯岸佑樹、松本航】

  

 

 スーパーラグビー(SR)サンウルブズでの休養期間が与えられた今春、堀江は奈良の短期賃貸マンションを借りた。拠点の群馬を離れ、泊まり込みで通い詰めたのはのどかな京都・木津川市に建つ施設。15年W杯日本代表コンディショニングスタッフの佐藤義人トレーナーと3週間かけ、1年間戦う体をひっそりと作り上げた。

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 15年2月、首の手術を受けた堀江は同9月のW杯前に焦っていた。左手の握力は一時14キロ。その春から代表スタッフとなる佐藤氏に出会うと「40歳まで現役を続けたい」と訴えた。「絶対、できる」。その答えで「こう真剣に言ってくれるのは佐藤さんだけだった。ある意味、賭けだった」とラグビー選手の武器といえる体を託した。

 それまではバーベルで重い重量を上げていたが、骨格を支える小さな筋肉を鍛える形に変わった。プロセスを事細かに説明し続けた佐藤氏は「納得したら、彼氏、彼女かと思うぐらい、毎日電話がかかってきた」と笑って感心する。内容は地味。だが、1人でのトレーニングでも手を抜かない。

 2人の体作りは、今もバランスや体幹の強化が中心だ。それでも1つのセッションは約3時間。佐藤氏は「15年よりむしろ、いい体になっている。体脂肪が落ちて、筋量が増えた。停滞しているんじゃなく、まだ伸びしろがある」と自信を持ち、堀江も誓う。「後輩たちに、年を取っても競技ができるという姿を見せたい」。その準備は激闘の裏で進んでいる。

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 「体脂肪を落として、体重は増やしたい」。加齢とともにトレーニングだけでは筋力がつきにくくなっていた堀江は今秋から食生活を改善した。現在まで体脂肪率を2%減少させ「体も軽くなったし、昨年に比べて試合でのパフォーマンスも向上している」と手応えを口にした。

 今年9月、知人の紹介で管理栄養士の川端理香さんに食事のアドバイスを依頼した。血液検査を受けると、約100項目の食品の中で数値から体質に合う合わない食材が分かり、小麦粉、卵、乳製品は遅延型アレルギーと判明。その食材を食べると、人によって頭痛や脂肪がつきやすいなどの反応があるという。川端さんに食品の原材料などを定期的に確認し、栄養学を勉強しながら食事管理を徹底。主に卵や小麦粉から作られるうどん、パンなどは控えて、その分、別の食材で補った。ギョーザの皮を米粉にかえるなど工夫もした。食事制限によるストレスが懸念されるが「米、肉、魚、フルーツは全部食べられるので大丈夫」と余裕の表情を浮かべた。川端さんは「プロ意識が高く、自身の体を理解している」と感心した。

 堀江は言う。「おじさんになる前の若い時に気づけば良かった。競技を長く続ける上で年齢に合った自己管理をしないといけない」。改めて、食の大切さを再認識していた。

 ◆堀江翔太(ほりえ・しょうた)1986年(昭61)1月21日、大阪府生まれ。大阪・島本高、帝京大を経てパナソニック入りした。09年に代表初キャップ。13年、14年シーズンとSRのレベルズ(オーストラリア)、16年、17年シーズンとサンウルブズでプレーした。ポジションはフッカー。好きな食べ物は崎陽軒のシウマイ弁当。家族構成は妻と娘2人。180センチ、104キロ。

 ◆佐藤義人(さとう・よしひと)1977年(昭52)8月8日、北海道生まれ。鍼灸(しんきゅう)師、日本体育協会公認アスレチックトレーナーとして、京都・木津川市に「SATO.SPORTS」を構えて11年目。ビーチサッカー日本代表歴を持ち、サッカー日本代表MF森岡亮太らのケアも行う。

 ◆川端理香(かわばた・りか)4月27日生まれ。管理栄養士。04年アテネ五輪のビクトリープロジェクトチーフ管理栄養士を務め、08年北京五輪では全日本男子バレーボールをサポート。プロサッカー選手らのサポートも行う。著書は「カラダの悩みは食べ方で99%解決する」など。