女子団体追い抜きで高木美帆(23=日体大助手)佐藤綾乃(22=高崎健康福祉大)高木菜那(25=日本電産サンキョー)の日本が第3戦で出した世界記録を3秒01更新する2分50秒87で優勝した。今季のW杯で実施された3戦をすべて世界新で制し、平昌(ピョンチャン)五輪での金メダルに向け、大きく勢いを付けた。

 日本の3戦連続の世界新に会場が沸く中、高木美は「喜ぶ力さえ残っていなかった」と膝に手をつき、荒い呼吸と闘っていた。6周のうち、レースの最初と最後に1周と4分の3ずつ、「初めて」という合計3周半、空気抵抗の大きい先頭を務めた。1000、1500、3000メートルと個人3種目でメダルを狙えるエースの力を最大限に生かすための新たな戦術で、第3戦後に作戦を決めたデビッド・ヘッドコーチの期待に完璧な形で応えた。

 2位から6位が2秒強の間にひしめく混戦となったが、ライバルの2位オランダを5秒近く突き放し、完勝。笑顔で表彰台に立つと、高木美は「3人がそれぞれの役割を果たせたし、ラップを見ても高いスピードを維持できた」とうなずいた。

 先頭で滑る周数は昨季までの2周半から、今季ここまでの3周、今大会で3周半と増え続け、さらに負担は大きくなる。糸川コーチは「美帆はきつかったと思う」と大黒柱の活躍をたたえつつ、その分先頭での周数が減った佐藤が、ラップを落とさなかった点を指摘。相乗効果を生んだ狙い通りの展開に「いかに減速をなくすかが重要。3人全員が余力を残さずにゴールしたことがタイムにつながった」と手応えを強調した。

 W杯3戦を完璧な形で終え、五輪に向け、死角が見当たらないほどの力を世界に示した。それでも、高木美は「平昌のリンクがどういう状態で、どういうことが想定できるかを予測して挑んでいきたい」と気を引き締め直した。エースに引っ張られ、日本が悲願の金メダルへ突き進む。【奥山将志】

 ◆団体追い抜き 3人でチームを編成し、2チームがリンクの対角から同時にスタートする。空気抵抗の大きい先頭を入れ替えながら女子はリンクを6周(約2400メートル)、男子は8周する。1人当たりの先頭の回数や隊列の順番にルールはなく、3人のうちで最後にゴールした選手のタイムで競う。各チームともメンバーを4人まで登録でき、レースごとに3人を選ぶ。五輪では06年トリノ大会から実施され、日本は女子が10年バンクーバー大会で銀メダルを獲得した。