フィギュアスケーターの浅田真央さん(29)から「塗り絵のススメ」です。浅田さんは3年前から、大人向けの塗り絵にはまり、新型コロナウイルスの影響で、自宅で過ごす#おうち時間に精力的に製作しています。その魅力、始める方へのアドバイス、そして絵に込められたメッセージを聞きました。自身が座長を務めるアイスショー「浅田真央サンクスツアー」も延期となる中、いま考えていることとは-。【取材・構成=阿部健吾】

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◆紹介編◆ 「カラーセラピーと言われているように、色を見るとすごく落ち着くんですよね、癒やされたりとか。色を選びながらやるので、心も落ち着きます」。

白い素材に色を重ねていく時間は安らかに過ぎていくという。2010年代に入り欧州で流行し始め、数年前から日本でもブームとなっている「おとなの塗り絵」。子供用と比べて繊細で、塗る面積も細かく配されているのが特徴で、自然や動物などもモチーフが題材となっている。

「きっかけは3年前ですね。最初は頂いたんです。もともとレゴとかパズルなどが好きでしたが、やってみたら楽しくて。それからです。塗り絵をしている時は他のことを考えずに『無』になれる感覚がすごくあって。好きな色を『こう合わせたらいいかな』と考えるのがすごく好きです」。

コロナの影響で、常に不安がよぎるような日常。

「そんな時だからこそ、『無』になれる時は大事かなと思います。おうち時間も楽しめるかなと」。

最近はSNSのインスタグラムに多くの作品を投稿している。そこにはある思いがある。

「いつもは淡い色が多かったんですけど、ちょっとでも元気を届けられたら良いなと思って、濃い色とかも使ってます。普段は滑って届けることが自分ができることだと思っていたんですけど、フィギュアもいまできないですし、何かできることないかなと思って、これしかないと」。

自分ができること。それを真摯(しんし)に模索している。

 

◆実践編◆ 作品製作のポイントを聞きました。

必要なものは?

「私は色鉛筆を使っています。50色ほどあれば。素材集は本屋さんなどで手軽に手に入ると思います」

製作時間は?

「1日1~2時間ほどで、2、3日でできます」

見本はありますか?

「参考とかはないですね。自分の好きなように、想像力豊かにやろうかなと。最初は『こんなはずじゃなかった』と失敗したのもいくつか。でも失敗したら、多少のことなら消してやり直したりもできます。私も本格的な色の知識があるわけではないので完全に自己流ですが、ルールがあるわけではないので、自分の好きなようにやられてはどうでしょう」。

題材は?

「私は花が多いです。フィギュアスケーターは花に触れ合う機会も多いですし、うちの母もお庭に花を育てていたので、接する機会は多かったですね」。

配色のポイントは?

「好きなピンクを使うことです。ベースにしています。最初は好きな色を基本にして、グラデーションなどを考えられるのも良いと思います」

 

◆コロナ編◆ 感染拡大は、自身の活動にも大きな影響をもたらした。18年5月に始まった「サンクスツアー」は7公演が延期となった。「早く滑りたい」と当初は思っていたが、今は違うという。

「いまは『滑りたい』より1日も早く状態が落ち着いて、世界中の方がいつも通りの生活を送れることが一番だと思います。ツアーをやる、やらないの前に、1人1人が日常で気を付けることが一番かな」

心の変化には1つの悲しい知らせもあった。昨年10月にテレビ番組で共演した志村けんさんが、コロナの犠牲になった。

「すごく優しく声もかけてくださり、私もお会いしてみたかった方ですごくうれしかったんですけど、その思い出が強く残っていたので…。ショックで悲しかったです。身近な方が亡くなり、それだけコロナはすごく怖いとあらためて感じました」

現在は食材の買い出し以外は自宅で過ごす。

「ツアーは延期した場所は必ず戻って、再開できたらいいなと思います」

いつも通りの日々が早く戻ることを祈りながら、その日を待つ。