男子テニスで世界35位の錦織圭(30=日清食品)が、27日開幕の全仏オープン(パリ)で、昨年8月の全米以来の4大大会に出場する。

サーブの改良に着手した錦織の新たなる挑戦を、3回にわたって解き明かす。最終回はサーブ改造で見える悲願の4大大会優勝。

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錦織のサーブの改良点は、大きく分けて4つ。そのうちの2つは、前回に説明した「ゼロポジションの確保」と「構えの手首の角度」。残りは<1>打点に胸を向ける<2>ラケットを担ぐ動作の小型化の2つだ。錦織は、サーブを打つ瞬間、両肩のラインがネットに平行になり、正面を向いてしまう癖があった。

しかし、野球の投球動作のように、腕がスイングする軌道を、斜め130度ぐらいにするゼロポジションに修正。胸を打点の方向に向けるように心がけると、体は正面を向かなくなった。それが<1>。また、テークバックでラケットを担ぐ動きを小さくし、ぶれを防いだ。これが<2>だ。

この4つの組み合わせを、国内で、日本協会男子代表の高田充ヘッドコーチ(51)と何度も練習した。「ある期間、やってなかったり、少し全力で打つと、癖が出てしまう」錦織を、高田コーチは、辛抱強く指導した。錦織、高田コーチ、岩渕聡男子代表監督、錦織の坂井忠晴専属トレーナーがグループLINEを作り、情報を共有した。

このサーブが完成すれば、コースでは課題だったバックサイド(右利きの場合)へのサーブが変わる。高田コーチは「スイング速度が上がり球の回転量も増える。第1と第2サーブの差を速度ではなく、回転量で調整すれば、第2サーブがバウンド後に跳ね、攻撃されにくい」と話す。

3月中旬に、拠点とする米フロリダに戻った錦織は、ミルヌイ新コーチから「サーブ、良くなったね」と褒められた。復帰したオーストリアの試合を見た高田コーチは、「テークバックまではいい形。ただ、打つときに、体が正面を向く癖が出ている」と、修正の難しさを感じている。

まだ道半ば。実戦で始めたばかりだ。高田コーチは「ツアーの統計だと、錦織のリターンは常にトップ10。しかし、サーブは50位前後で、それを20~30位にできれば、4大大会の優勝は見える」と、錦織の新たな挑戦に期待を込めた。(完)【吉松忠弘】

◆全仏オープンテニスは、9月27日から、WOWOWで連日生中継。また、WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信予定。