羽生結弦(26=ANA)の20-21年シーズンが幕を閉じた。コロナ禍に見舞われた1年と東日本大震災から10年を思い、復興支援ソング「花は咲く」を披露。前日のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)練習の意図、ショートプログラム(SP)をピアノ曲に戻すことを「考え中」と明かすなど来季の展望も語った。

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今季最終戦で羽生は、被災地を、激変した世界を思って舞った。震災後、初めて世界選手権で3位になった12年ニース大会を思い出し「その時と同じことを(発生)10年で思って。皆さん、どれほど苦しいのか考えた時、今のコロナの状況と変わらないんじゃないかと。あの時は(17歳と)若くて、被災地代表は嫌だ、自分の力で勝ち取った日本代表だ、と思っていた」と唐突に9年前を回想した。

「というのは…」と続けて補足した。「当時、最終的には感謝の気持ちが出てきて、応援されていたんだなと」。自粛や試合辞退があったこの1年も、終えてみると「僕が応援する立場ではなく応援されていたことを、また今回すごく感じられた。滑る意味を見いだせば、自分が存在していい証しになるのかな」。震災後と同じく、誰かの光になろうとして3大会に出た今季も、光をもらっていた。

その輝きを、さらに放つ来季へ。前日は4回転半に挑戦する姿を国内初披露した。「体がそんなに疲れていなかったし、試合会場でやることに意義があるのかなと。また(国内拠点で)1人で練習することになるとも思うので、上手な選手がいて刺激がある中でやった方がイメージが固まりやすい」と意図を説明した。

12回の試跳で、回転が抜けた以外は転倒6度と成功なし。「良い時のジャンプに全然ならなくて非常に悔しかった。浮かなくて回転が足りなくて。もっと良いです、本当は!」と負けん気を見せ「もっと(完成に)近づいているし、めちゃくちゃ悔しい。この悔しさをバネに、若い時のようなガムシャラさも備えつつ、冷静に分析しながら自分の限界に挑みたい」と燃えるきっかけも今大会で得た。

4回転半を組み込みたいフリーは「天と地と」を継続方針。ショートプログラム(SP)はピアノ曲に戻す可能性を「率直に言うと考え中です」と認めた。今季のロック曲「レット・ミー・エンターテイン・ユー」は一定の役目を終える。「今の状況だからこそ生きる、やりたいプログラム。この状況がどうなっていくか。自分の気持ちがどう変化していくか。何を表現したいか。考えながら選んでいきたい」。今後はアイスショー出演や練習を重ね、21-22年の演技の輪郭を色濃くしていく。【木下淳】