26年2月6日開幕のミラノ・コルティナ五輪まで半年ほど。今年2月に日本勢第1号で出場を決めたアイスホッケー女子「スマイルジャパン」の選手たちはいま、どう過ごしているのか。そもそも、氷上で戦う彼女たちは、猛暑のオフに何をしているのか。代表選手を多く抱える道路建設ペリグリンの夏トレーニングに「潜入」。練習の邪魔をする意外な天敵とは…。
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「氷都」苫小牧といえども、夏は暑い。炎天下の公園に集まるのは、普段は防具をつけて氷の上でプレーするアイスホッケー女子・道路建設ペリグリンの選手たちだ。夏場の練習は陸上と氷上の2部、あるいは3部構成。この日は敏しょう性を高めるアジリティトレーニングや下半身をいじめ抜くサーキットトレなどが中心で、1時間以上も大粒の汗を流し続けた。
厳しいメニューでも、選手たちからは常に仲間を励ます大きな声が響く。「♪♯○△~※」(筆者には「はま~い」と聞こえる)。正直、なんて言ってるか聞き取れない。FW輪島夢叶(22)が笑いながら教えてくれた。「がんばで~す…って言ってます。がんば~、みたいな。聞こえないですよね(笑い)」。言葉はまったく判別できなかったが、雰囲気のよさは伝わる。疲労がたまり、足が上がらなくなった選手にも全員でエールを送るから、脱落者は出ない。
各自が持参するタオルは汗を拭くため…だけのものではない。練習中、彼女たちの周りを蚊が飛び交う。振り回して追い払うための大事な“武器”。紫外線、虫刺され…乙女にとっての天敵とも戦いながら、1部練習が終わるころには足がフラフラになる。「もう氷上(練習)は無理!」。輪島はいたずらっ子のような笑顔で、それでも足はリンクへと進める。日によってはアップダウンを走るクロスカントリーや長距離走、マシンを使ったウエートトレも組み合わせるという。
シーズンが終わると、例年6月までは一度氷から離れる。五輪3大会連続出場中のDF小池詩織(32)は「若い頃は早く(氷に)乗りたいって思った」という。だが、経験を重ねるごとに“充電期”の重要性をかみしめている。「体のケアだったり、気持ちのリフレッシュは、次のシーズンに向かう中ですごく大事」。カナダ出身で、同国でのプレー経験が長いDF細山田茜(33)も賛同する。カナダではチームでの活動再開は9月ごろが一般的。それまでは合同自主トレのような形で各自がスキルを磨く。「『氷に乗りたい』『ホッケーをしたい』っていう気持ちが出てきてから、シーズンをスタートする方がもっと成長していくのかなと思います」。スケート靴を履かない期間にこそ、レベルアップのポイントが隠れている。
ミラノ・コルティナ五輪出場を決めた今年2月の最終予選でチーム最多5得点を挙げた輪島は今オフ、さらなるシュート力の向上を目指している。スケーティングは世界でも上位の瞬発力を持つが、ショットにもスピードと正確性を求める。「パワーもそうですし、もっとコースコースを狙えるように。シュートのスピードも足りないなと思っています」と、上半身を重点的に鍛える肉体改造に取り組む。小池も体重増、筋力増を掲げる。「自分の弱いところをいかにこの期間で克服するか」。氷上のパフォーマンスを上げるために、夏場にしかできないことがある。
8月に入り、日本代表合宿が本格化している。22歳の輪島はミラノ五輪が初出場となる。18歳だった前回北京大会は手首のケガが影響してメンバー入りを逃した。「…だいぶトラウマ」と悔しい過去。同じことを繰り返さないために、強化とコンディション調整を両立させなければならない。「自分の体と相談して、休むときは休むようにしていきたいです」。3大会連続の五輪出場となる細山田は「オリンピックがあると思うとトレーニングも楽しくできます」。真冬の大舞台で輝くため、それぞれの夏を過ごしている。【本間翼】
○…全日本女子選手権で歴代最多20度の優勝を誇る名門の道路建設ペリグリンは、今季から新谷誠監督(32)が指揮を執る。昨季まで東京ワイルズでコーチ兼任でプレーしていた同監督は、選手と一緒に汗を流しながら指導にあたる。チームは選手権決勝でダイシンに敗れた昨季からのリスタート。「このメンバー構成でできるのはいまだけ。シーズンが終わったときに『出し切った』『このチームでやれてよかった』って思える子がひとりでも多く出てくれたら」と見据えた。


