【第83回】
子供のは楽観視できない
うつ病(1)
北海道大助教授で児童精神科医の伝田健三医師は、北海道の小中学生2万人を対象とした実態調査「気分に関する調査」を行い、11月に「子どものうつ 心の叫び」(講談社)を出版した。
「子どもは元気なもので、大人と同じうつ病が存在するはずはない」と考えがちだが、誤りであり「子どものうつ病を楽観視しない方がいい」と伝田医師は指摘する。適切な治療が行われないと、青年期や成人後に再発したり、対人関係や社会生活における障害が持ち越され、慢性的なものになる可能性もあるからだ。
「子どもは大人のように抑うつ気分を自覚したり言葉で表現することが難しいため、表情、態度、行動、身体症状などの変化を丁寧に見ることが大切です」。子どものうつ病には、さまざまな病態があり、複数の病態が合併していることも少なくない。学校に行けなくなる子どももいれば、イライラして親に当たり散らし、落ち着かない状態になったり、斜に構えた厭世(えんせい)的な態度や逸脱した行動をとる子もいる。また頭痛や腹痛などを繰り返し訴える子どもや、メソメソと泣き、自分を責めて後悔ばかりする場合もある。
一般的に、いかにも落ち込んで見える状態の方が、うつ病の症状として受け入れやすいが、反抗的な態度やイライラも、うつ病が原因ということがある。思春期のうつ病の6割程度に、別の病気が合併している。中でも摂食障害が多く、強迫神経症やパニック障害なども少なくない。「合併症があると、本人の訴えや周囲の注意が、目立つ症状に向いてしまい、うつ病が発見されにくい場合もあります」。
伝田医師はうつ病の症状を、基本症状と個人(性格、年齢など)によって変わる2次症状の2つに分類し、以下の症状を挙げている。
○基本症状 睡眠障害、食欲障害、朝の調子が悪く夕方から楽になる、興味・関心の喪失、勉強意欲と集中力の低下。
○2次症状 不安、憂うつ、焦燥感、イライラ感、悲嘆、悲哀感、自分を傷つける、自殺願望、ひきこもり。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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