フィギュアスケートの樋口新葉(21=明大)が自らに集中し、思い出の地で輝く。5日、日本が初日を4位で終えた団体戦女子ショートプログラム(SP、6日)の出場選手が発表され、白羽の矢が立った。

初出場で「雰囲気にのまれている自覚がある」と分析するが、会場は17年のグランプリ(GP)シリーズ中国杯で2位と躍進した首都体育館。当時と同じ“全集中”で臨み、初のメダルを目指す日本のバトンをつなぐ。

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北京五輪の練習用リンクに立ち、3日が過ぎた。シニア6季目で国際大会の経験も豊富な樋口には、特別な高揚感がある。「いつも通りに跳べず、力が入り過ぎちゃっている感じがする。まだ周りの雰囲気にのまれている自覚があります」。午前10時20分から35分間の練習では、3回転ジャンプを精力的にこなした。五輪初演技、団体戦SPに向けて自らに言い聞かせた。

「経験したことがない大会で何も分からない。いつも通りにできればいい。あんまり考えすぎず、自分に集中して頑張りたいです」

それは4年3カ月前、同じ場所で繰り返した言葉と重なった。17年11月初旬、樋口は今回の舞台となる首都体育館にいた。GPシリーズ中国杯。平昌五輪切符を争う三原舞依、本田真凜との競演が注目されたが「自分のことだけに集中して、ここまでやってきた。そう思い続けながら試合に臨みたい」と誓った。SP、フリーともに全てのジャンプをそろえて日本勢最高の2位。のちに五輪金メダルをつかむザギトワ(ロシア)とは、わずか1・36点差だった。この日、当時の雰囲気とのギャップに「全然違うリンクに来た感じ」と苦笑いしつつ「そのイメージがすごく強くて、楽しみにしていた」と明かした。

役割は自覚している。以降の4年で競技会での成功までたどり着いたトリプルアクセル(3回転半)のSP投入については「できたらいいなと思うけれど、失敗しないような構成でやりたい」と語るにとどめた。ペアの三浦、木原組が急成長を遂げ、メダルの期待が高まる団体戦。前日4日には先陣を切った宇野が男子SP2位で流れを作った。

「『自分がそこについていかないと』という気持ちが大きい。焦らないで、いつも通りにできればいいなと思います」

滑り込んできた「ユア・ソング」に、今の精いっぱいを注ぎ込む。【松本航】