ノーマルヒル金メダリストの小林陵侑(25=土屋ホーム)が合計292・8点で銀メダルを獲得した。

1回目142メートルで首位に立ったが、2回目138メートルでリンビク(ノルウェー)に逆転を許した。冬季五輪日本人初の個人2種目制覇には惜しくも届かなかったが、今大会2個目のメダルを手にした。

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今日は魔物になれなかった。金メダルを獲得した6日ノーマルヒルの試合後には「僕が魔物だったかもしれないです」と話していたが、「今日は魔物はリンビクだったのでは」とすがすがしく笑った。「完敗です」と、1回目2位から逆転勝利した2歳下の若者をたたえた。個人2冠を目指し、1回目に最長不倒142メートルの大ジャンプを繰り出したが、結果は銀。「うーん、難しいですね。すごくうれしい気持ちと、金メダルを逃したことにちょっと悔しい気持ちと」と複雑な心境だった。

重圧を感じた。2回目、金メダルまでの飛距離はヒルサイズと同じ140メートルが必要だった。スタートを待ちながら、直前に首位に立ったリンビクへの歓声が聞こえた。緊張する中での飛躍。わずかに届かず、優勝ラインの2メートル手前で着地した。前日11日の予選は9位通過。一夜で修正し2回そろえた。だから「全体的に2本ともいいパフォーマンスができました」。力を尽くした。

五輪シーズンに向けて進化を目指した。夏場は飛び出しの精度向上を意識した。所属先の先輩である伊藤有希のスキー板を借りて練習した。いつもより約30センチ短く、操作がしやすい。その分、スキー板の向きも上下しやすい。男子の宮平ヘッドコーチは「飛び出しで体が前傾姿勢になるとスキー板が下がる。それを我慢できるように」と狙いを話す。力をロスなく踏み切り台に垂直に伝えて空中へ。そして距離を伸ばす技術を磨いた。

肉体改造にも着手していた。18年からチームのトレーナーに就任した入江彩織さん(30)は小林陵の体の左右差が気になった。「見てわかるくらい、左足の方が細かった。太ももだと3センチから5センチくらい」と振り返る。ピラティスやヨガなどで体づくりに取り組んだ。現在ではほぼ左右対称。バランスの良いフィジカルを手に入れた。

14日の男子団体で、ジャンプ勢では98年船木和喜以来となる1大会3個目のメダルを狙う。「自分のいいパフォーマンスができるように」と、パンダの大会マスコットキャラクターを胸元にしまいながら、気持ちを切り替えていた。【保坂果那】