予選3位の岩渕麗楽(れいら、20=バートン)が女子初のトリプルコークに挑戦した。2本目まで4位。逆転を懸けた3本目に、斜め軸の後方3回宙返り技「トリプルアンダーフリップ」に挑んだ。しっかり回り切って着地はしたものの、直後にバランスを崩してしまい転倒。惜しくも成功とならなかったが、女子では史上初となるチャレンジに各国の選手から次々と祝福のハグを受けた。

2年前の夏からエアバッグで練習していたといい「雪山でやったのは今日は初めてです」と明かした。さらに打ち明けたのは「昨日の3本目で左手の骨を折っちゃって」と左手の甲の骨が折れていた事実。「グラブするのが、つらくて。トゥエルブでけがしたので恐怖心もあった」。その中で決断したトリプル挑戦だった。

「やっぱ、トリプルやってみたい。こういう場所でしか、なかなか気持ち的にできるものじゃないから。トゥエルブで決めにいくのもあれですけど、でもトリプル挑戦して絶対勝ちたいなと思って、そっちの気持ち方が強くて挑みました」

左手を固定して臨んだ試合。最後、立ったかに見える出来までもっていった。「合わせにいくのが、少し速くて。本当にちょっとだと思うんですけど、速くて回転を止めきれなかったのかな」。ただ、好敵手たちからの祝福に「転んだのに褒めてくれて、声をかけてくれて。最高の環境」と感謝した。

結果は166・00点(83・75点、82・25点、37・00点)で4位。4年前の平昌五輪と同じ結果で「順位を上げられず悔しい」と涙を流した。4年後のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に向けても「今はまだ考えられてないです。ごめんなさい、今はまだ考えられない」と語ったが、女子初のチャレンジで五輪史に名を刻んだ。

成長を示し、恩返しするために目指した表彰台には立てなかったが、左手を骨折しながら強行出場したことを知った国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長から、決勝後に記念の腕時計(スウォッチ)を個別に贈られる場面もあった。「まさか見てもらえていると思わなかったので」と驚きつつ「こういうのもらえて、うれしいです。ふふふ。ありがとうございます」と特別な体験もした岩渕。メダルには届かなかったが、この大舞台で大技に初挑戦した事実は決して色あせることはない。【奥岡幹浩、木下淳】