女子55キロ級はマクドナルド山本恵理(35=日本財団パラリンピックサポートセンター)が59キロの日本新をマークして優勝した。

昨年5月にチャレンジ杯で自らが記録した53キロの日本記録を6キロ更新し、来年の東京パラリンピック出場に必要条件の世界選手権(7月、カザフスタン)参加標準記もクリアした。

「今日は絶対に白(いランプ)を9個そろえるつもりでした」。精度向上が課題だった。安定した試技が3本そろわずに記録が停滞した時期もあったか、昨年12月の米大陸オープン選手権(コロンビア)前から試合を想定しメンタルリハーサルを徹底。ベンチ台に入るまでのルーティンや試技時の心拍数まで実戦に合わせた調整法を取り入れた。

そして、この日は目標通りに3回の試技で3人のジャッジすべてに成功を表すの白ランプをもらった。52キロでスタートし、2回目に日本新の56キロを挙げ、3回目にさらに記録を更新。特別試技で挑んだ大台の60キロには失敗したが、集中力にあふれた鬼気迫る戦いぶりを観衆も固唾(かたず)をのんで見守った。

普段はパラリンピックサポートセンターの常勤職員として障がい者スポーツへの理解を広め、普及を促す仕事に就いている。16年5月に開催した競技体験会に飛び入り参加したことがきっかけで、東京パラリンピックを目指すことになった。「これでやっとスタートラインに立てた感じです。応援してくれる人たちのためにも東京へ向けて頑張りたい」。競技中には見せなかった笑顔。山本の言葉ははずんでいた。【小堀泰男】