オリンピック(五輪)とインターハイ-。今年は新型コロナウイルスの影響で史上初めて中止となったが、7年前の13年北部九州総体では、道産子の東京五輪候補たちが戦いに挑んでいた。後に男子100メートルで9秒台をマークする小池祐貴(25=住友電工)、日本記録を樹立する男子110メートル障害の金井大旺(24=ミズノ)と女子やり投げの北口榛花(22=JAL)。だが3人はいずれも優勝を逃す。敗北の悔しさをバネに、五輪候補へとのし上がった。

<小池祐貴 絶対王者桐生の存在>

灼熱(しゃくねつ)の大分銀行ドーム(当時)。7年前、今や東京五輪候補に名を連ねる道産子アスリートたちが、そろって悔し涙を流した。

最も注目を集めていたのは、3カ月前に10秒01をマークした桐生祥秀(京都・洛南3年)が出場する男子100メートル。北海道高校新の10秒38をマークした小池(立命館慶祥3年)だったが、大会新(10秒19)の桐生に敗れ2位に終わった。雪辱を誓った得意の200メートルも桐生の2位。「(勝つのは)絶望的だったけど、自分の中では勝てるという期待もあって…」。涙が止まらなかった。

だがこの悔しさが、その後の陸上人生を変えた。17年9月、桐生が日本人初の9秒台となる9秒98を出すと、19年7月には、小池も英ロンドンで9秒98をマークした。総体での完敗から6年。目標としていた桐生に肩を並べた。高校時代の恩師、日裏徹也監督(38)は「インターハイチャンピオンになれなくても、ハングリー精神はすごく大切なこと。『いつか逆転してやる』って思って練習する」。敗戦をバネにした。

<金井大旺 下級生の後塵を拝す>

金井(函館ラサール3年)も男子110メートル障害決勝は5位。高校時代の唯一の目標だった総体での屈辱。優勝者と2位は、下級生だった。今では「集大成としてそこで結果を出すためにやってきた。悔しさもあって、大学で続けようって気持ちが出てきた。それがあって今がある」と振り返る。卒業後は法大に進学し、社会人1年目の18年日本選手権で13秒36をマーク。14年ぶりに日本記録を更新した。

<北口榛花 予選落ちから2連覇>

そして女子やり投げの北口(旭川東1年)。高校入学後に競技を始め、道予選でいきなり優勝。このときは新星として全国デビューを果たしたが、43メートル42で予選落ちした。翌年の2年生、さらに3年生で連覇を果たしたのは、1年生での完敗があったから。日大進学後の19年には、64メートル36の日本記録を生み、その後記録を66メートルまで更新している。

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多くのドラマが生まれるインターハイ。五輪を目指す原石たちは、大会中止となった現実を、どう受け止めているのだろうか。昨年女子200メートルで優勝した石堂陽奈(立命館慶祥3年)は、連覇の夢をかなえられなかった。中止決定時には「やっぱり気持ちは落ちていた」という。それでも初出場した23日のセイコー・ゴールデングランプリ(国立競技場)の100メートルで3位。10月の日本選手権での優勝を目標に気持ちを切り替え、前を向く。トップアスリートとなった小池らが敗北で味わった悔しさとは違う、やるせなさ。その思いが今後の競技人生の後押しとなって欲しい。小池らの活躍を見て、そう願う。【保坂果那】

◆全国高校総合体育大会 高校スポーツ日本一を決める総合競技大会。インターハイとも呼ばれ、夏に陸上、水泳など30競技を実施する(冬はスキー、スケートなど)。トップ選手への登竜門で、陸上男子の桐生祥秀(日本生命)や米プロバスケットボールNBAの八村塁(ウィザーズ)らも活躍した。各競技の全国高校選手権が1963年に統合され、第1回は新潟県を中心に実施。負担軽減などを目的に2011年から複数の自治体にまたがるブロック開催となった。19年の参加選手総数は約2万8000人。20年大会は新型コロナウイルス感染拡大の影響で史上初めて中止になった。