新型コロナウイルスの感染拡大で史上初めて延期された東京オリンピック(五輪)の新日程が30日、来年7月23日から8月8日に正式決定した。パラリンピックは同8月24日から9月5日。東京・晴海で組織委、東京都、政府と国際オリンピック委員会(IOC)の4者による電話会談が行われ、国際パラリンピック委員会(IPC)も含めた5者で合意した。直後のIOC臨時理事会でも承認された。新型コロナ対策、選手の準備、夏休みなど諸条件が春との比較で上回った。この日は組織委の第36回理事会も行われた。

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緊急の電話会談は午後6時から開かれた。組織委の森会長、小池都知事、橋本聖子五輪相が参加。武藤事務総長も理事会後の定例会見を途中で切り上げ、IOCバッハ会長との最終協議に駆け込む慌ただしさ。組織委によると、五輪の「7・23開幕」は都、国の合意を得た森会長が申し入れ、バッハ会長が承諾した。同8時45分から会見した森会長は「新型コロナを少しでも長く見る必要がある。神頼みではあるが、来夏へ不退転の決意だ」と述べた。

今夏から1日の前倒しで決着した。森会長によると「選手の準備、代表選考プロセス」等を考慮し、春開催案は早々に消滅。「夏休みと重ねた方が輸送面、ボランティア確保、観戦者にとっても望ましい」と結論づけられた。来年7月という大枠の中で23日に決まった理由は武藤事務総長が説明。「(前週の)16日では6~7月にある都議選の影響を受け、30日だと(閉会式が)8月15日の終戦記念日と重なる。我が国にとって社会的意味がある日で避けたかった」と政治的な思惑や国民感情に配慮した。

1日の競技セッションを変更しない原則も確認された。メダル決定戦のテレビ中継時間など、長年かけて綿密に調整したバランスがある。「巨大で難解なパズル」(バッハ会長)を崩せば致命傷になりかねない。武藤氏は「期間中に土日が3回あり、重要な決勝戦が当たるよう組んでいる。現状を守っていきたい」と見通しを語った。開会式の2日前に福島・あづま球場で先行開幕するソフトボールの日程も踏襲する方針だ。

これで組織委は会場や宿泊施設の再確保を具体的に始められる。「絶対に困ると言われた会場はない」と武藤総長。呼応した世界陸連も、障壁だった来年8月の世界陸上を1年延期させるよう動くと発表し、同7月の世界水泳も同調した。

24日の延期発表から、わずか6日。IOCが26日に「今後3週間程度」と示していたメドが大幅短縮されてのスピード決定に、森会長は「早期決定が準備を加速させる」と自賛した。武藤総長も「それほど欧米の感染拡大が大変だったということ」と、おもんぱかった上で「しかし、こんなに早く決まるとは…」。驚きを上回る安堵(あんど)の表情を見せた。【木下淳】

▽日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長 アスリート、関係者にとって新しい目標が定まり、今日からまた新たな道のりが始まります。多くの方々の支えを受けてひと回り成長したチームジャパンが、世界中のアスリートとともに最高のパフォーマンスで世界中の人々の心を揺さぶる瞬間を今から楽しみにしています。