辞任を表明した東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)の後任人事で、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(63)が候補として急浮上していることが15日、分かった。

関係者によると、84年ロサンゼルス五輪柔道金メダリストに加え、国際オリンピック委員会(IOC)委員、国内スポーツ界のトップとしての功績に期待する声が多く、窮地の組織委会長候補に挙がった。組織委理事によると今週中に臨時理事会を開き、次期会長の選任に道筋をつける。

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15日夜、「今の五輪を引っ張っていくのは山下しかいない」。そんな情報が政界に回った。橋本聖子五輪相をはじめ、スポーツ庁の室伏広治長官ら、さまざまな人材が組織委の会長候補に名前が挙がった。だが、橋本氏は国務大臣規範から大臣を辞めなければいけない条件や、室伏氏は昨年10月にスポーツ庁長官に就任したばかりという立場もあり、次期会長候補に挙がりつつも、ハードルが高いといわれてきた。

橋本氏については五輪相を辞めても「自民党議員のままでは政治的な中立性を求める五輪精神にそぐわない」という声がある。そうなると五輪相だけでなく、参院比例当選という理由から離党だけでなく国会議員も辞めなければならない状況になる可能性もある。関係者の中で、そのようなリスクを負ってまで橋本氏が組織委会長の任を背負うのかという疑念が渦巻いている。

そんな中、大会関係者からJOC山下会長の「組織委会長兼任案」が浮上した。組織委幹部は「さまざまな候補がいるが、日本のオリンピックのトップは山下会長。残りわずか5カ月、アスリート側のトップが運営のトップになるのは良いことなのでは」と話した。

他の大会関係者も「国民に納得いただける形で五輪のゴタゴタの責任を取れるのは山下氏しかいない」と手腕を期待した。開催都市の都庁筋も山下会長が急浮上していることを明かした。

橋本氏を筆頭に、さまざまな候補者が世間をにぎわせているが、それぞれクリアしなければならない障壁があり、適任者が確実視されていない。その中で、国内オリンピアンを取り仕切るJOC会長が、五輪を運営する組織委のトップになればIOCや、国内外のアスリートにとっても納得できる人事になるとの指摘があり、山下組織委会長案が浮上した。

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