準々決勝2試合が行われ、史上最多4度目の優勝を目指すスペインがPK戦でスイスを退けて、2大会ぶりの4強入りを決めた。退場者を出した相手に対し、終始攻め続けたが決勝点を奪えず、東京オリンピック(五輪)にも出場する予定のGKウナイ・シモン(24=ビルバオ)の活躍でPK戦をものにした。

PK戦に入ると、190センチ、88・7キロの体がより大きく見えた。東京五輪にも出場が決まっているスペインの守護神シモンが次々にシュートをセーブ。スイスの2人目シェア、同3人目アカンジと、いずれも右へ跳んでシュートをはじくと、その威圧感に圧倒された同4人目のバルガスがゴール上へ大きく外した。

スペインは5人目オヤルサバルが落ち着いてシュートを決めて勝利。次の瞬間、シモンは駆け寄ってきた仲間たちにもみくちゃにされていた。マン・オブ・ザ・マッチにも選ばれ「信じられない気分だ」と笑顔を見せ、「正直、PK戦までは何もしていないんだ。ゾマーにこの賞をあげたいよ。2度ほど決定的なシュートを止めたし、PK戦でも素晴らしかったから」と相手GKへのリスペクトも忘れなかった。

汚名返上の勝利だった。シモンは6月28日の決勝トーナメント1回戦・クロアチア戦で、ハーフライン付近からのペドリのバックパスをトラップミス。右足に当たったボールがそのままゴールインしてしまうという、ありえない失態を犯していた(記録はペドリのオウンゴール)。しかし4日後の試合で見事に気持ちを切り替えて勝利に貢献。ルイスエンリケ監督も「我々には優れたGKとキッカーがいた。もうやることがないくらい準備万全で臨んだので、今までで一番落ち着いて見ていられたPK戦だった」と振り返った。

2戦連続5得点をマークしていた攻撃陣はオウンゴールの1点に封じられ、相手に退場者が出てからも、圧倒的に好機をつくりながら勝ち越すことができなかった。それでもシモンは「(PK勝ちでも)次に進むことが大事なんだ。胸を張って準決勝へ向かいたい」と話し、イタリアとの決戦へ意欲を示した。

◆ウナイ・シモン 1997年6月11日、スペイン・バスク州生まれのGK。地元のビルバオの下部組織で育った。同クラブのサードチームであるバスコニアでプロデビューし、18年にトップチームで初出場した。昨年A代表デビューを果たし、現在はデヘア(マンチェスターU)からレギュラーの座を奪っている。15年にはU-18同国代表としてオヤルサバルとともに、静岡で開催されたSBS杯のために来日している。

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