【右投げ左打ちの功罪〈5〉】技術向上の妨げ…守備ミス期待の「ゴロ打ち」指導

「調査報道」のスタイルで、右打ちと左打ちの優位性に迫る大型連載。ピラミッド型が成熟している日本球界では、あるカテゴリーから右打ちが激減します。(全15回連載)

その他野球

★勝利至上主義の産物

右打者と左打者の日米の比率は、日本の小中学生のトップレベルと、メジャーのトップ選手がほぼ同じなのが分かった。

日本で右打者の比率が大きく減少するのは、高校時代からになる。

中学から高校に進んだ選手がどのように成長するか。どのような環境や指導で育ってきたのか?

さまざまな角度から検証し、右打者が減少していく要因を探ってみよう。

2012年3月20日、打撃練習をするアルバート・プホルス

2012年3月20日、打撃練習をするアルバート・プホルス

高校時代の日米の野球の違いから考えてみる。

アメリカでは「個人の能力を重視」した「パワー野球」が主流。日本は「チームとしての勝利を重視」する「緻密な野球」を実践する傾向が強い。

アメリカには全国大会のような規模の大会はなく、日本の高校野球は世界的にも類を見ないほど、国民の関心度が高い。どうしても「勝利至上主義」に偏る傾向が強くなるのは、仕方ないだろう。

指導法の違いを考えてみる。アメリカでは幼い頃から「遠くに飛ばせ」や「思い切り振れ」と指導することが多い。「どんなアウトでも、アウトは同じ」という考え方が強い。

今では、日本でもアメリカ流の指導法が増えているが、ひと昔前は「転がせ」や「大振りするな」という指導が多かった。

現在でも送りバントを含め、進塁打などの自己犠牲系のチーム打撃が推奨される側面がある。フライや三振は悪、とする傾向が強く「アウトのなり方」にこだわる傾向が強い。

ブライス・ハーパー(2016年4月)

ブライス・ハーパー(2016年4月)

日刊スポーツ評論家・和田一浩氏どちらが正しいとかの判断はできないでしょう。でも、個人の打撃技術を上げるなら、アメリカ的な指導の方が伸びるでしょうね。今は「フライボール革命」とか伝わって、フライがいいみたいに言われてますよね。でもライナーが理想で、フライもゴロも打ち損じ。少し違和感がありますが、いい打ち方をすれば、打ち損じがフライになりやすい、というのあります。だから、フライを打ち上げて怒っていたら、バッティングは良くならない。逆に無理に転がそうとすれば、バッティングはどんどん悪くなるでしょう。

プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。