【祝!殿堂入り】気の毒すぎるランディ・バース 最高峰「55の壁」にアタックできず

ヤクルトの村上宗隆三塁手(22)が、王貞治(巨人=55本)を超えたのは最終試合、その最終打席でした。2022年10月3日、DeNA戦(神宮)で56号を放ちました。かつて村上と同じように55本に挑みながら、はね返された男がいました。85年、同じく3冠王に輝いた阪神ランディ・バースです。ラストゲームの相手は王監督が率いる巨人。勝負してもらえず「あと1本」のまま、54本で全日程を終えていました。必然の殿堂入りを祝して「55」の壁に阻まれた38年前にタイムスリップします。

プロ野球

◆ランディ・バース1954年3月13日、米国オクラホマ州ロートン生まれ。ロートン高から72年ドラフト7巡目でツインズ入団。77年メジャーデビュー。83年阪神入団。85年は3冠王に輝き、21年ぶりのリーグVに貢献してMVP。翌86年も連続で3冠王となり、同年の打率3割8分9厘はプロ野球記録。ベストナイン3度。88年途中に長男の病気で帰国し、そのまま退団。引退後はオクラホマ州の上院議員を務めた。現役時代は184センチ、95キロ。右投げ左打ち。

左から王、バース、村上のフィニッシュ。前2人と村上は、フィニッシュの位置が違う。王、バースの「ローフィニッシュ」は生粋のスラッガーである証左で、メジャーの強打者に多く見られる。NPBでは少数派だが、レッドソックスに移籍した吉田正尚が代表格

左から王、バース、村上のフィニッシュ。前2人と村上は、フィニッシュの位置が違う。王、バースの「ローフィニッシュ」は生粋のスラッガーである証左で、メジャーの強打者に多く見られる。NPBでは少数派だが、レッドソックスに移籍した吉田正尚が代表格

DeNA入江が真っ向勝負 151キロ直球

村上は最終打席となる第4打席を自らつくり、56号を放った。この日、4打数無安打なら、打率は3割1分4厘1毛6糸。2位の中日大島洋平(3割1分4厘2毛2糸)を6糸下回ってしまう。

3打数無安打では5毛9糸上回る。3冠キープには、3打数がリミットだった。そんな中、2打席目に左前打して1厘4毛引き上げ、4度目の挑戦を可能にした。左前打がなければ56号はなかった。

すでに順位が決まり、この試合も7-2。ほぼ勝負が決まった7回だった。DeNAの5番手として登板した入江大生は、真っ向勝負を挑んできた。

初球、内角高めの151キロ速球を右翼中段に運んだ。「全力で勝負しに行った結果、捉えられてしまいました」。入江が悪びれずに話した。


85年のバースに、こんな勝負の場面は1度もなかった。

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徳島・吉野川市出身。1974年入社。
プロ野球、アマチュア野球と幅広く取材を続けてきた。シーズンオフには、だじゃれを駆使しながら意外なデータやエピソードを紹介する連載「ヨネちゃんのおシャレ野球学」を執筆。
春夏甲子園ではコラム「ヨネタニーズ・ファイル」を担当した。