【怪物の聖地】岩手県営野球場が53年の歴史に幕 朗希を追った金子真仁記者が訪れた

WBC優勝の余韻のままに、プロ野球のペナントレースが開幕した。その陰で1つの〝聖地〟が消えた。3月31日、岩手県営野球場が閉場―。あらためてワールド級の力を示したエンゼルス大谷翔平投手(26)とロッテ佐々木朗希投手(21)がともに、岩手での高校時代に初めて公式戦で160キロを投げたマウンドを、最後に踏みに行った。

その他野球

金子記者が訪れたのは3月6日。球場周辺には残雪

金子記者が訪れたのは3月6日。球場周辺には残雪

雪解け水が土と混じっていく音

大谷翔平は、佐々木朗希は、このマウンドからどんな気持ちで160キロを投げ込んだのだろう―。

妄想の予定が、割と瞬時に狂う。一塁側ベンチを出て、岩手県営野球場の土を踏む。柔らかい。雪解けのフローズン。茶色の革靴が数センチ沈む。足が浮く感じになる。

マウンドから。大谷と朗希が160キロを投じた

マウンドから。大谷と朗希が160キロを投じた

抜き足、差し足。いかに革靴の汚れを減らせるか。私の意識はそこに集中。聖地への道は険しい。

3月6日の昼に訪れた。マウンド周辺がうっすらと白く覆われる。耳を澄ます。雪解け水が土と混じっていく音が、清涼な空気と合わさって心地いい。ここは森の奥ではなく、熱気あふれるグラウンドだった。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。