阪神鈴木勇斗 BBBの涙から1年半…フォーム迷子から脱した「28」/連載〈15〉

阪神の強力な投手陣の多くは、2軍の鳴尾浜球場で育ってきました。創価大から21年ドラフト2位で入団した鈴木勇斗投手(23)も、地道に実力を積み上げている段階です。制球に苦しみ涙したプロ1年目を糧に、2軍の先発ローテーションの一角を任されるまでに成長しています。代名詞だった「カーショーフォーム」に別れを告げた理由とは。近況を聞きました。

プロ野球

◆鈴木勇斗(すずき・ゆうと)2000年(平12)3月17日生まれ、鹿児島県出身。鹿屋中央では甲子園出場はなし。創価大では先発に定着した3年秋に東京新大学リーグ最多タイ4勝で優勝に貢献。MVP、最優秀投手賞、ベストナインの3冠に輝いた。座右の銘は西郷隆盛の漢詩の一節「耐雪梅花麗」。140キロ台中盤に安定してきた直球に加え、縦に割れるカーブにも自信を持つ。背番号28。174センチ、83キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸1100万円。

ドラ2で1軍キャンプ…3者連続四球

プロ2年目の夏、鈴木の表情は明るく見える。そう問いかけると、少しばかり照れ笑いを浮かべた。

鈴木去年はアップから嫌でしたから。毎日、「今日はうまくいくかな」って考えていましたね…。

21年ドラフト2位。「最速152キロ左腕」の肩書を引っさげ、プロの門をたたいた。

「涙」から始まった、厳しいスタートだった。22年2月の沖縄・宜野座での1軍春季キャンプ。シート打撃で打者5人相手に投げたが、3者連続四球など制球が全く定まらなかった。

シート打撃練習で鈴木勇斗(左から2人目)は三者連続で四球を出しマウンドで内野陣から励まされる=2022年2月

シート打撃練習で鈴木勇斗(左から2人目)は三者連続で四球を出しマウンドで内野陣から励まされる=2022年2月

自らの情けなさにベンチで泣いた1日を忘れるはずがない。

鈴木あの悔しさはもう、ずっと心の中にありますね。

プロ1年目は1軍登板なし。ウエスタン・リーグでは中継ぎ、先発で13試合に登板し防御率8・06だった。25回2/3イニングで与えた四死球は「26」。登板ごとにフォームが変わり、投げ方すら分からなくなっていた。

シート打撃練習後、ベンチで矢野燿大監督(右)から声をかけられる=2022年2月

シート打撃練習後、ベンチで矢野燿大監督(右)から声をかけられる=2022年2月

登板機会を減らし、2軍鳴尾浜のサブグラウンドで、江草2軍投手コーチとマンツーマンのスローイング練習したことも1度や2度ではない。

カーショーとの決別

あっという間にプロ2年目になった。創価大時代に、動画を見て取り入れたドジャース・カーショーをほうふつとさせる二段モーションのフォームと完全に決別したのは、4月のことだ。

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