リンクサイドでの拍手、マリニンへの声かけ…三浦佳生が大舞台の裏側で見せた姿

2023年4大陸選手権&世界ジュニア選手権王者の三浦佳生(18=オリエンタルバイオ/目黒日大高)が、今季も躍進を続けています。

グランプリ(GP)シリーズ・フィンランド大会でGP初優勝を飾ると、2年連続でGPファイナル(中国・北京)に進出。昨年末の全日本選手権では4位に入り、初の世界選手権(カナダ・モントリオール)に選出されました。

1月末の国民スポーツ大会冬季大会(北海道・苫小牧市)でも、ジュニアのプログラムとなる少年男子で優勝しました。

そのフリー直前でした。前の滑走者に拍手を送る姿がありました。

自身の演技直前での拍手-。このささやかな行動にフォーカスを当てながら、今季の舞台裏を描きます。

フィギュア

直前の選手に拍手

パンパンパンパン。

その音はリンクの片隅で確かに響いていた。

2024年1月29日午後5時前。国民スポーツ大会冬季大会の少年男子フリー。

SP首位発進の三浦佳生は、直前の滑走者の中村俊介(木下アカデミー)の演技が終わると、リンクサイドで手をたたいていた。

国民スポーツ大会冬季大会 少年男子フリーで前の選手の演技直後に拍手を送る三浦(撮影・藤塚大輔)

国民スポーツ大会冬季大会 少年男子フリーで前の選手の演技直後に拍手を送る三浦(撮影・藤塚大輔)

各カテゴリーの都道府県代表2人が集まるこの大会は、個人順位だけでなく、団体成績も競う。リンクサイドではチームの仲間が、都道府県ごとの色合いのジャンパーを着用し、食い入るように演技を見つめる。手作りのうちわやボードを手にし、ジャンプが決まればひときわ大きな歓声でたたえる。

そんな空気感ゆえに、直前の滑走者の演技に拍手を送ったことは、さして特別な行為ではなかったのかもしれない。

ただ、これが国際大会であればどうだろうか。まして、朝の公式練習であれば…。

2カ月半前拍手が響いていたのは、北欧フィンランドだった。

エイモズに拍手

2023年11月18日午前8時。GPシリーズ・フィンランド大会の男子フリーを午後に控え、後半グループの6人がエスポーメトロアリーナの氷上で汗を流していた。

SP首位発進を決めた三浦も、黒色の練習着姿で黙々とジャンプの感触を確かめていた。

そこに荘厳な曲が流れ始めた。ケビン・エイモズ(フランス)のフリープログラム「ボレロ」だった。

一定のリズムが繰り返されながら、メロディーは壮大さを増していく。自らが熱の渦を生み出すように、エイモズは練習からただただ力強く滑っていく。荒々しく体を振りながら、その世界観を表現していた。

ボレロの曲に乗って演技するエイモズ(AP)

ボレロの曲に乗って演技するエイモズ(AP)

プログラムのフィナーレへ。いつものように、ジャッジ席へ目がけてポーズをとった。本番さながらの余韻を残し、曲かけ練習は終わった。

その瞬間だった。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。