3人の高校生が表現に注力するワケ「存在意義を…」ジャンプへの思い、滑走屋での学び

フィギュアスケートの全国高校選手権(インターハイ)が2025年1月20~22日、新横浜スケートセンターで行われました。

女子で6位となった奥野友莉菜(17=駒場学園)は、昨年から2年連続でアイスショー「滑走屋」に出演。今年の広島公演(3月8、9日)にも名を連ねています。昨季以降はジャンプの不調に苦しむ試合もありましたが、ショーを通じて競技との向き合い方にも変化がありました。

男子11位の田中蓮音(17=星槎国際東京)、女子5位の櫛田育良(17=中京大中京)の思いも交えながら、ジャンプと表現に向き合う高校生の姿を描きます。

フィギュア

「こんな自分を」最年少で「滑走屋」に出演した奥野友莉菜

表情がパッと明るくなった。

「こんな自分を見つけてくださったことが、すごくうれしかったです」

奥野友莉菜が思い返していたのは、昨年2月の「滑走屋」のことだった。

発起人である高橋大輔が中心となり、自らスカウトした若手スケーターらとともに作り上げるアイスショー。スケーター紹介もないままノンストップで続き、全員で1つの作品を描いていく。

女子フリーで演技する奥野(撮影・垰建太)

女子フリーで演技する奥野(撮影・垰建太)

独創性に富んだ演出は話題となったが、同時に特徴的だったのは競技の実績にかかわらないキャスティングだった。

通常のショーは国際大会や全日本選手権で活躍していることが、出演の“条件”のようになっている。競技会での得点の大部分は、ジャンプの難度や精度によって占められるため、大前提としてジャンプが跳べなければ、ショーへ出演することは難しい。

一方で滑走屋は、主要競技会で顕著な結果を残すことを条件としていない。たとえ高難度のジャンプが跳べなくても、滑りや表現に光るものがあれば、誰にでも出演のチャンスがある。

「滑走屋」公開練習後、記者の質問に答える奥野友莉菜(2024年2月5日撮影)

「滑走屋」公開練習後、記者の質問に答える奥野友莉菜(2024年2月5日撮影)

伸びのあるスケーティングが武器の奥野は、最年少の16歳で声がかかった。

ジャンプと表現のバランスに惑いを感じる中、滑走屋での経験は「自分らしさ」を再確認する時間になっていた。

今季の演技で“目線”にこだわる理由

奥野にとって、昨季は苦難のシーズンだった。

全日本ジュニア選手権では総合17位となり、前年の6位から大きく順位を落とした。特にショートプログラム(SP)10位で迎えたフリーでは3本のジャンプで転倒して21位にとどまり、2年連続の全日本選手権へは遠く及ばなかった。

ジャンプが決まらなければ、次のステージへは進めない。次のステージへ進めなければ、自分が好きなスケーティングを見せる機会も狭まることになる。

女子フリーで演技する奥野(撮影・垰建太)

女子フリーで演技する奥野(撮影・垰建太)

「私はジャンプ以外のスケーティングが好きで、ただ滑っているだけでも好きなんですけど、去年からなかなか結果が出なくて。全日本ジュニアもバタバタとジャンプを失敗してしまって、ずっと落ち込んでいました」

そんな矢先に「滑走屋」のオファーは届いた。

見てくれている人がいる。

それが何よりの喜びだった。

「あらためて、スケートをやっていて良かったなと思いました。直接言われたわけではないですけど、滑走屋が終わった後のドキュメンタリーで大輔さんが仰っていたのが『きれいなスケートをする子だ』と。それもすごくうれしかったです」

参加してみると、たくさんの気付きがあった。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。