森口が言葉に込める思い、隣で長岡が感じていること “完璧主義”だったゆなすみの成長

フィギュアスケートのペアで愛称「ゆなすみ」こと長岡柚奈(19)森口澄士(23)組(木下アカデミー)は、初の4大陸選手権を7位で終えました。

ショートプログラム(SP)、フリーではともにサイドバイサイドジャンプでミスがありましたが、自己ベストの174・76点をマーク。1カ月後には世界選手権(3月24~30日、米ボストン)へ初出場します。

今大会では森口の声かけに着目。相棒の長岡がどう受け止めているのかに触れながら、2人の成長を描きます。

フィギュア

アジア大会での森口の声「不安があったというより…」

ワイヤレスイヤホンから流れる声には、熱がこもっていた。

2月12日。冬季アジア大会のペア・フリー。

日本にいた私のLINEに音声ファイルが届いた。現地取材中の竹本穂乃加から送られてきたのは、銅メダルをつかんだ長岡、森口組の取材音声だった。

冬季アジア大会のペアフリーを終え、取材に応じた長岡柚奈、森口澄士組(撮影・竹本穂乃加)

冬季アジア大会のペアフリーを終え、取材に応じた長岡柚奈、森口澄士組(撮影・竹本穂乃加)

長岡は出国前日の2月7日に右足首を捻挫し、落ち込んでいたのだという。そんな時、森口から「今までやってきたことが全てなくなるわけではない」と励まされたことが、支えになったと明かした。

直後に「どういう思いで励ましたのか」と尋ねられた森口は、間髪を入れずに語り始めた。

「僕としては不安があったというよりも、正直、自分たちは自信があった中で、良さが崩れていくのがすごいもったいないなという思いで、励ましていました。別に不安があるというよりは、柚奈ちゃんが自信を持っていたことが不安に変わるのがもったいないよという気持ちで。僕たちは不安があったわけではなくて、良い練習を積んできて、良い気持ちでここに来ることができたので、そこは自分たちでも成長しているところかなと思います」

表情は分からないが、私はその言葉を聴きながら胸が熱くなった。これだけの芯のある言葉を口にできることに、人としての強さを感じた。

そして1つの問いが浮かんだ。

隣で聞いている長岡は、どのような思いで受け止めているのだろうか―。

私は8分46秒の音声ファイルを閉じ、翌週の4大陸選手権でそれを取材テーマの1つにすると決めた。

20日SP後の森口の言葉「柚奈ちゃんに自信がある」

それから1週間。

最高気温2度の日が続くソウルで、4大陸選手権が幕を開けた。

木洞アイスリンクの外観。観客が列をつくって入場(撮影・藤塚大輔)

木洞アイスリンクの外観。観客が列をつくって入場(撮影・藤塚大輔)

20日のショートプログラム(SP)は57・29点で9位発進。

2人が並んで跳ぶサイドバイサイドで長岡のループが2回転となり、着氷が乱れた。前日練習でも、この日の朝の公式練習でも、曲かけ後に黙々と跳び続けていたが、本番で決めきることはできなかった。

ただ、直後のスロー3回転サルコーは余裕をもって成功。そのまま大きなミスなく滑り切っていった。

フィニッシュすると、長岡はややうつむいたが、リンクサイドへ上がる時には笑顔が戻った。ジャッジ席に向かって右側のショートサイドで撮影していた私のカメラにも、明るい表情の2人の写真がたまっていった。

SPの演技を終えてあいさつする長岡柚奈(右)森口澄士組(撮影・藤塚大輔)

SPの演技を終えてあいさつする長岡柚奈(右)森口澄士組(撮影・藤塚大輔)

私は試合後の取材にあたって、森口がどのような声をかけたのかに着目した。

演技の振り返りの話が続いたところで「SPを迎えるにあたって、森口選手から長岡選手に声かけしたことはありますか」と尋ねた。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。