【箱根story外伝】世陸代表の西山和弥「速くなかった」という嘘みたいな過去/上

夢がなかった少年は、走ることで未来を描き出していった-。

西山和弥(24=トヨタ自動車)は、2月の大阪マラソンで日本人トップの6位でゴールしました。初マラソン日本最高タイムとなる2時間6分45秒をマーク。8月の世界選手権(ブダペスト)代表と、10月15日の「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」(東京・国立競技場発着)の出場権を獲得しました。

世界選手権の男子マラソン開催日(8月27日)まで約3カ月。苦しみを乗り越えた24歳は、走る喜びをかみしめます。全2回の上編では、プロ野球選手に憧れた小学生の頃から大学入学までをたどります。

陸上

東洋大で箱根2年連続1区区間賞
2月に初マラソン日本最高2時間6分45秒

2月の大阪マラソンでは初マラソン日本最高タイムとなる2時間6分45秒をマークした

2月の大阪マラソンでは初マラソン日本最高タイムとなる2時間6分45秒をマークした

西山和弥(にしやま・かずや)

1998年(平10)11月5日、大阪府門真市生まれ。5歳から群馬で過ごす。伊勢崎市立第一中へ入学するとともに競技を始め、中3の全日本中学校陸上競技選手権(全中)では3000メートルで全国3位。東農大二高では全国高校総体に3年連続出場。東洋大では4年連続で箱根駅伝に出場し、1年時から2年続けて1区区間賞を獲得。23年2月の大阪マラソンで、初マラソン日本最高記録となる2時間6分45秒をマーク。23年8月の世界選手権(ブダペスト)男子マラソン代表。22年4月に結婚。趣味はプロ野球観戦。

将来の夢にプロ野球選手と記入も
「自分はなれないだろうな」

小学6年生の頃。

卒業文集には「将来の夢」を書く欄があった。

西山和弥は困ってしまった。そのとき熱中していたもので、割り当てられた欄を埋めた。

「プロ野球選手」

ただ何となく、書いただけだった。実際は野球少年ですらなかった。

「野球をやっていたわけではなかったです。ただ、正直、夢があんまりなくて。好きだったのがプロ野球だったので、そう書いた記憶があります」

友人たちはそのわずかなスペースに、思いを詰め込んでいた。自分には、明確な夢がなかった。

「僕はスポーツ万能というタイプではなかっただけに、プロ野球選手はかっこいいなって思っていました。自分はなれないだろうなって」

憧れたのは、当時ロッテで活躍していた西岡剛内野手だった。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。