【箱根駅伝story〈21〉立教大】押し殺した感情、流した涙…宮澤徹が捧げた献身

立教大は1月の第100回箱根駅伝で総合14位となりました。

昨年10月に上野裕一郎前監督(現ひらまつ病院)が解任された中、チームを引っ張ったのが宮澤徹主将でした。

本大会でのメンバー入りを目指しつつ、主将としてチーム運営に尽力。最終的に箱根駅伝の出走はかないませんでしたが、最後まで役割を果たそうと努めました。

大学で陸上競技からは退き、この春からは新社会人として新たな1歩を踏み出します。葛藤を抱えながらも歩んできた日々を「箱根駅伝story」としてお届けします。

陸上

練習で力走する立教大・宮澤(写真提供:立教スポーツ)

練習で力走する立教大・宮澤(写真提供:立教スポーツ)

10区途中で人知れず流した涙

宮澤は泣いた。

人知れず、静かに泣いた。

2024年1月3日。箱根駅伝10区。

荷物運搬係の役目を終え、バスの車内で中継を見つめていた。

首位で独走を続ける青学大が何度も映る。そんな中、立教大・関口絢太(4年)が映し出された瞬間があった。

前を走っていた国士舘大・鈴木伸弥(3年)、中央大・柴田大地(1年)をとらえる。追いついたのも束の間だった。

構うことなく、一気に抜き去る。差が開いていった。

宮澤の胸は熱くなった。

「すごいですよね。ほんと」

第100回箱根駅伝で10区区間3位となった関口絢太をねぎらう立教大・宮澤(左)

第100回箱根駅伝で10区区間3位となった関口絢太をねぎらう立教大・宮澤(左)

9区終了時での総合順位は14位。シード圏内の10位までは2分57秒差があった。

シード権獲得へは厳しいタイム差だったが、それでも諦めない姿がそこにはあった。

揺れる車内の中で、涙がこぼれた。

「ほかのチームを抜き去っていく姿を見た時は、ちょっと泣いてしまいました。シードが難しい状況でも、ひたすら目指していく魂の走りを見て、熱い思いになりました」

主将になってからは、感情を押し殺す時のほうが多かったかもしれない。

この時ばかりは、これまで胸の内でとどめていた感情が涙となってあふれた。

「ここに至るまでの過程ではいろいろあった分、チームへの思い入れもすごく強くなりました」

いろいろあった―。

チームに激震が走ったのは、2カ月半前のことだった。

競技会で力走する立教大・宮澤(写真提供:立教スポーツ)

競技会で力走する立教大・宮澤(写真提供:立教スポーツ)

予選会直前の監督解任…明るく振る舞った上級生

2023年10月10日。

選手たちが寮の一室に集められた。大学の関係者が前に立つ。重い口調でこれからのことを伝えられた。

謹慎処分が下されること(のちに解任)。4日後の予選会は指揮官不在で臨むこと。

宮澤は直感した。

「チームがバラバラになるんじゃないか」

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。