【朝乃山を追う:24年初場所〈上〉】7連勝で優勝争いの単独トップに―
2024年最初の本場所に臨んだ大関経験者の朝乃山(29=高砂)は、出場11日ながら9勝を挙げて実力を示した。初日から7連勝。優勝争いの単独トップに立ったが、初黒星を喫した8日目の玉鷲戦で右足首を痛めた。「右足関節捻挫で全治2週間を要する見込み」との診断書を提出し、9日目から休場。4日間休場したが、13日目から再出場し、最終的に9勝3敗3休と2場所ぶりに勝ち越した。
21年5月に新型コロナウイルス感染対策ガイドラインの違反。6場所の出場停止処分を経て、三段目から再出発した朝乃山のドキュメント。今回は初場所を振り返る。
大相撲
<初場所西前頭7枚目:9勝3敗3休>上編 初日~7日目
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危なげなく7連勝
初日の土俵に立った朝乃山は、左ふくらはぎにサポーターを施していた。ただ、痛みはほとんどなかった。昨年11月の九州場所を、初日から7日間休場する要因となった、肉離れの箇所へのけがの再発予防。昨年名古屋場所から3場所連続、別々のけがに悩まされ続けてきた。それらのけがの影響で、初場所前の調整は万全とは言い切れなかったものの、久しぶりに明らかなけがはなく、初日の土俵に臨むことができていた。
それでも「引いたり、はたいたりするとけがする可能性がある」と、警戒心は強いままだった。だが、これまで以上に「前に出る」という意識を強く持つ、プラス思考に変えていた。
その初日。相手は昨年の秋場所を十両優勝、再入幕の九州場所を11勝で敢闘賞と、勢いのある一山本だった。同学年で普段は仲が良い。同じ前頭7枚目で、初日に顔を合わせる予感はあった。2日前の取組編成会議後、初日の割が出た直後には「やっぱりな」と、笑顔で話していた。8カ月ぶり2度目の対戦。相手が前回よりも調子を上げている状態での対戦だけに、楽しみにしていた。
立ち合いから突いて出てきた相手に、左おっつけで対抗した。何度も上体を起こされたが「前に出る」を徹底した。じりじりと圧力をかけると、相手の引きに乗じて一気に前に出て押し出した。相手の勢いをのみ込みような完勝。「初日から出られたのはうれしい。今日の初日のために稽古してきた」と胸を張った。
元日に起きた能登半島地震で心を痛めた。富山市の実家は無事、富山・氷見市に住む母方の祖母も大きな被害はなかったが、故郷と同じ北陸地方、隣接する石川県は甚大な被害を受けた。取組後は「土俵で戦う姿を見せて、相撲で恩返しするしかない。1番は白星を届けること」と力説。これまで以上に、北陸地方出身ということを背負って戦う覚悟をにじませた。
つかんだ左上手を、最後まで離さず快勝した。立ち合いで相手の当たりを受け止めると、すぐに体を寄せて左上手を引きつけた。まわしを切りたい相手に、何度もすくい投げを打たれても離さず、腰を落として圧力をかけて寄り切り。それでも、満足はしていなかった。
「上手を取ったのはよかったけど深かった。深かった分、相手十分に差されてしまった。そこがダメだった。最後は出るしかないと思って、相手の投げに警戒して出た」と、途中、バタバタとした展開となったことを課題に挙げた。それでも連日の出足を止めない相撲には「前に出ているのはいいこと」と、うなずいた。サポーターを施している、先場所前の左ふくらはぎ肉離れの影響も、風呂に入って温めたり、手持ちのマッサージ器具をあてがってほぐしたりと、日々のケアで「今は大丈夫」と、場所前よりも気にならなくなっていた。
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高田文太Bunta Takada
1999年入社。現在のスポーツ部ではサッカー(1)→バトル→五輪→相撲(1)→(5年半ほど他部署)→サッカー(2)→相撲(2)→ゴルフと担当。他に写真部、東北総局、広告事業部にも在籍。
よく担当や部署が替わるので、社内でも配った名刺の数はかなり多い部類。
数年前までは食べる量も社内でも上位で、わんこそばだと最高223杯。相撲担当になりたてのころ、厳しくも優しい境川親方(元小結両国)に「遠慮なく、ちゃんこ食っていけ」と言われ、本当に遠慮なく食べ続けていたら、散歩から戻った同親方に「いつまで食ってんだ、バカヤロー!」と怒られたのが懐かしいです。
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