ボート界は、4期間で通算勝率3・80未満の選手に対し、退会勧告がなされる。いわゆる「クビ」宣告。先月、この危機を奇跡的に回避した選手がいる。113期の小寺拳人(26=福井)だ。

選手生命を懸けた勝負駆けを成功させた小寺拳人
選手生命を懸けた勝負駆けを成功させた小寺拳人

小寺 3期目が終わった時点で、結構な借金(勝率不足)があったので。そんな時に、川村正輝さんから、「ここまで来たら、開き直ってやるしかない」と言われ、そこから、気持ちが軽くなりました。

同じグループの武田光史、中島孝平、さらには川合理司(静岡)、守田俊介、中西宏文(滋賀)らの激励も受けた。4月には第1子が誕生したばかりだった。「結婚した時に、このままではクビになると伝えていました。それでも、一緒になって子供を産んでくれた」。妻への感謝が最後までもがく覚悟につながった。4月の地元戦では父親に送られレース場に向かった。

小寺 父親がボート好きだったから、選手になりました。車中では「9割、クビだから。でも、頑張ってくる」と言いました。自分でもあれだけの成績(オール3連対、選抜1着)を取れると思っていなかった。

結果的に、この三国の激走が生き残りにつながった。4月25日、追加あっせんの尼崎で気迫の4カドまくり。ついに勝率3・80を超えた。

小寺 僕は人に恵まれていたと思う。僕と同じ状況の後輩がいれば、力になりたい。

苦しんだぶん、これからたっぷりと活躍する覚悟だ。