車両十数台を移動させ、珠洲市鵜飼漁港へ通ずる道が開通した(写真は日本財団提供)
車両十数台を移動させ、珠洲市鵜飼漁港へ通ずる道が開通した(写真は日本財団提供)

最大震度7を観測した能登半島地震から2カ月余り。石川県出身の選手を何人か取材した。今、どんな思いで走っているのか。

小坂風太(23=福井)は、元日、金沢市内の自宅から家族とともに、車で富山の祖母宅へ向かっていた。激しい揺れを感じ、残してきた愛犬が心配になりUターン。帰宅すると、家の中はひどい有様だった。「もう、がちゃがちゃ。ウチの家族は無事だったけど、友達はおばあちゃんが亡くなったり…」。家の片付け、友人への連絡を終え、1月18日からレースに参戦している。

珠洲市の依頼を受け宝立地区で作業。25台以上の車の救出、移動を行った(日本財団提供)
珠洲市の依頼を受け宝立地区で作業。25台以上の車の救出、移動を行った(日本財団提供)

西橋奈未(27=福井)は母と初詣の最中だった。金沢市内の自宅に戻ると、壁にひびが入り、家の中はぐちゃぐちゃだった。「母と2人で家を片付けながら、余震もくるし…。めちゃめちゃ怖かった。猫はずっと震えてました」。親しい友人は能登に帰省中だった。「その子は、家の屋根がV字型になったらしい。もう回復できんて言ってました。津波の影響で、街のど真ん中に、なんでこんなに魚がいるんだっていうぐらい、いっぱいいたりとか、ありえない状況過ぎる…そう言ってました」。悲惨な現状を聞き、落ち込んだ。それでもレースに復帰した。

2人には共通認識がある。走ることで舟券が売れれば、それが復興への一助となるという思い。日本財団は地震後、すぐに被災地支援を開始。ツイッターをみると、さまざまな活動が行われている。日本財団公式XのURLは下記。

https://twitter.com/NipponZaidan?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

輪島港への物資輸送、災害支援NPOへの活動資金援援助(1事業100万円上限)、スタッフは現地に入り、炊き出し、車や家財の搬出など活動は多岐にわたる。募った募金は5億2700万円を超えている(2月5日現在)。

珠洲市三崎町の避難所での活動の様子。足湯や炊き出しを行った(日本財団提供)
珠洲市三崎町の避難所での活動の様子。足湯や炊き出しを行った(日本財団提供)

重機で車両十数台を移動させ、珠洲市の漁港へ通ずる道を開通させたり、倒れた家屋から貴重品、アルバムから車の鍵、成人式用の着物まで探し出す。避難所支援はもちろんのこと、倒壊した酒造から無事なお酒、酒米を“救出”。なぜ巨額の支出、迅速な支援が可能なのか。職員に聞いた。

日本財団総務部 林美彩さん 地震後、すぐに職員が現地に入りました。重機を使える職員が道路の啓開作業や、修復などを行っています。海上輸送で必要な物資を届けています。NPOへの資金援助が、大きな役割を果たしていると聞いています。優先順位をつけて、迅速に人材と資金を投入できるのが、国とは違う、私ども民間の強みだと考えております。日本財団の一番の活動資金は、舟券の売上、ボートレースから頂いているお金です。

珠洲市内で被災した美容室から成人式用の着物を救出(日本財団提供)
珠洲市内で被災した美容室から成人式用の着物を救出(日本財団提供)

日本財団はボートレースの売上の約3・1%を財源とし、さまざまな事業を支援する公益財団法人。62(昭37)年設立。災害支援、教育支援、子どものサポートなど、活動は幅広い。それを支えるのは、舟券を買うボートレースファンだということは、もっと広く認知されてもいい。

舟券が売れれば、その分、財団の資金が増える。ひいては被災者支援につながる。小坂は「微々たるものかもしれないけど、走り続ける」と言った。西橋も「自分が大きな舞台で活躍することが、売り上げにつながると思う。頑張るっきゃないですね」と同じ思い。勝っても負けても、その舟券は確実に、復興にひと役買っている。それを頭の片隅に起きながら、今日も買おうっと。【網 孝広】