【ヤマコウの時は来た!】

 ◆12R 

 2日目は強風が吹き荒れて、先行にちゅうちょする選手が目立った。絶対勝てる戦法など存在しない。見えないからこそ選手の本質が見える2日目だった。その中で、深谷知広は強いし、自力に迷いがない。

 勝てるかどうか分からない中、自分の戦法を貫く選手がガールズにもいる。ファンから圧倒的な支持を集める奥井迪だ。

 -先行にそこまでこだわるのはなぜか?

 奥井 全く競輪が分からない時に、レースを見て「かっこいい」と思ったのが村上義弘さんだった。それ以来、先行で戦いたいと思いました。

 -ガールズはラインがない分、先行は不利だとは思わなかったか

 奥井 不利だからこそ先行で勝てるのが一番強いと思います。脚力がないと、運だけで逃げ切ることはできない。その分、魅力を感じます。

 同じように先行にこだわる先輩に加瀬加奈子がいる。くしくもデビュー戦で加瀬と同乗した。

 奥井 加瀬さんと先行争いするつもりで挑みました。先行もできて楽しめました。

 結果は加瀬にまくられて5着。予2も4着で決勝に進めず、最終日も3着だった。

 奥井 3場所ほど思うように勝てなくて、戦法に対して迷いがでました。その時に師匠の富山健一さんが「しっかり先行で戦えば勝てる」とぶれ始めた自分を正してくれました。それ以来迷いはなくなりました。

 迷いがなくなった奥井は急激に力を付けた。4場所目の立川で完全優勝。しかも加瀬に3連勝するという快挙だった。

 奥井 バックを取ろうという気持ちだけで挑んだ開催でしたが、3連勝は自信になりました。

 -アドバイスを受けて、すぐ結果を出すことはなかなかできないが、奥井はすぐに成績に表れた。それ以降、1着を量産していく。人気となる中、先行することに対しての恐怖心は芽生えなかったのか

 奥井 先行して、なおかつ1着を求められるので、プレッシャーもあるし不安もある。結局は自分との闘いだと思います。そんな時、後押ししてくれるのがファンの声援です。

 私もいろんな選手にインタビューをするが、奥井への声援は非常に大きい。自分を貫くスタイルは分かりやすく、競輪の持ち味である「人間性」が強く支持されている要因だろう。

 奥井 声援が大きいから頑張れるし、先行で勝ちたいと思える。自分のためだけでは頑張れないし、とても続けられないです。

 奥井は、誰にも負けない強い精神を持っていると思っていた。しかし、誰もが抱える悩みがあって少し身近に感じた。

 その奥井を本命に推す。今回、先行意欲が旺盛な高木真備がいないのも追い風となる。スピード上位の石井貴子、児玉碧衣は外枠で、梶田舞は本調子を欠く。そんな中、小林莉子が近況、さえを見せている。

 奥井 どのコレクションも大事なのは変わりない。でも、自分の戦法を貫くことが一番大事ですから。

 奥井の逃げ切り優勝に期待したい。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)