【ヤマコウの時は来た!】

 実力日本一を懸けて戦う日本選手権、決勝9人が出そろった。武田-平原の関東勢優勢と伝えられる中、私はあえて浅井を推す。

 昨年のKEIRINグランプリ(GP)、今年の全日本選抜決勝は平原が逃げた。だから今回は武田が平原を引き出すだろうと考えがちだが、私はそれに異を唱えたい。思い出すのが昨年の競輪祭決勝。逃げる武田を平原が差して優勝した。しかし、武田も2着に逃げ残る先行だった。

 最近、武田は若手に前を任すレースが増えてきた。しかし、その後輩たちの背中を見て複雑な心境になるときがあると言う。前を走る後輩にアドバイスすることは「自分たちのラインが対戦相手にどう思われているか考えろ」と問いかけて、それをどう解釈するかは自己判断に任せることにしている。平原本人は「武田さんの後ろで負けても悔いはない」と常日頃言っている。そのあたりを推測すると力を出し惜しみすることはないが、自分も狙えるレースで平原にチャンスを与えたいというところに行きつく。

 対する浅井。「深谷のおかげで決勝に乗ったから、その師匠である金子さんが後ろに付く意味を考えて走る」と意味深なコメント。そう考えると、浅井の仕掛けは早いとみた。そしてキーとなるのが、平原が番手回りということ。もし武田が駆けても平原はサラ足だ。横の動きは武田を上回る。浅井の巻き返しに対して平原は必ず仕事をする。それでも浅井は武田-平原を乗り越える。後ろはもつれることになる。その利を生かして浅井が栄冠に輝くとみた。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)