村上博幸(40=京都)が初の「夜王」に輝いた。まくった渡辺雄太に乗ってゴール寸前で差し切った。G2以上の優勝は14年全日本選抜以来約5年半ぶり。今年はG2以上の成績がいまひとつだったが、この優勝で後半戦に大きな弾みをつけた。

歴戦の猛者も最後は焦った。村上は「展開が絶好過ぎて、4コーナーまでは楽だったのに、いざとなったら緊張した。足が三角に回りました」と苦笑い。5年以上遠ざかっていたビッグタイトルを前に、足がスムーズに回転しなかった。着差はわずかに1/8輪。「VTRを見ても自分を信用できなかった」。だが、1周回って戻った敢闘門で近畿の仲間に優勝を告げられると、ようやく軽く右手を上げて喜びを表した。

準決後、一時は単騎の戦いを覚悟した。だが、渡辺が単騎なのを聞き、熟慮の結果、その番手を選択した。「渡辺君に好きに走ってもらおうと思っていたが、よく攻めてくれました」。今までは縁のなかった南関の若者に、素直に感謝した。

高松宮記念杯後には京都・黄檗山での5泊6日の違反講習に出向いた。練習は一切できず、座禅と草むしり、掃除などの日々。「(得るものは)ないですね。腰は痛くなるし、体調は崩すし、十数年ぶりでしたけど、地獄でしたね」。それでも修行後にしっかりと立て直すあたりはプロ。「弱気なようだけど、ナショナルチームがいないここに合わせてきた」と、狙って取った優勝を強調した。

これで賞金はGP圏内の5位に浮上。次の目標となる8月名古屋オールスターに向け「ナショナルのスピードは3枚ぐらい上。追い込みには厳しい状況だけど、何とか頑張りたい」と闘志を燃やす。今年掲げた「チャレンジャー精神」で、今度はブノワジャパンを破っての日本一を勝ち取る。【栗田文人】

◆村上博幸(むらかみ・ひろゆき)1979年(昭54)4月15日、京都市生まれ。花園高卒。競輪学校86期生として01年8月デビュー。10年KEIR1Nグランプリ優勝。G1は10年日本選手権(ダービー)など優勝3度。G2制覇も07年共同通信社杯など今回で3度目。通算成績1356戦354勝。通算獲得賞金8億7486万2865円。166センチ、69キロ。血液型O。