◆アシストは最後方から

 まくりという戦法は高いリスクを伴う。先行したラインの選手にブロックされて不発に終わったり、落車に巻き込まれるケースが少なくない。前前勝負こそが競輪の鉄則。よほど実力の差がない限り、まくりタイプよりも逃げに徹する方に、援軍は集まりやすい。

 しかし、1995年の高松宮杯・決勝。まくり勝負が濃厚だった神山雄一郎は、戸辺英雄-尾崎雅彦-阿部文雄-高橋光宏という4人もの味方を従えた。先行型でさえ、なかなか4人を引き連れるケースはない。まくる選手の5番手という絶望的な位置を選択した高橋は、常識を覆してまで神山の実力と将来性を認めたといえる。

◆万感の一撃必殺

 スタートして神山ラインが前団を形成し、三宅伸-小橋正義-本田晴美-安福洋一が押さえると神山は後退。三宅は最終周回2コーナーという遅いタイミングで主導権を取ったが、神山は注文通り、5番手からバックまくりを決めて2車身差の圧勝を収めた。戸辺、尾崎が流れ込んで2、3着。見事に関東で表彰台を独占した。

 高橋も注文通りに最終周回9番手。それでも、神山の桁違いのスピードを利して差し脚を伸ばし、5着を確保した。三宅ラインに加わっていたら、これ以上の成績を残せたかどうか。

 単に速い、強いというだけではなく、後ろに4人を並ばせ、まくる。神山の走りは、トップレーサーの威厳と風格に、満ちあふれていた。【藤代信也】

◆第46回・高松宮杯:決勝(優勝賞金2030万円)

1着【2枠2番】神山雄一郎(27=栃木)青龍6着→2予1着→東王1着

2着【1枠1番】戸辺 英雄(32=茨城)1予3着→2予2着→東王2着

3着【4枠5番】尾崎 雅彦(37=東京)青龍7着→2予1着→東王4着

4着【3枠3番】小橋 正義(27=岡山)白虎5着→2予2着→西王1着

5着【6枠9番】高橋 光宏(32=群馬)青龍4着→2予3着→東王3着

6着【6枠8番】本田 晴美(31=岡山)1予1着→2予1着→西王4着

7着【4枠4番】安福 洋一(36=奈良)1予2着→2予2着→西王2着

8着【5枠6番】阿部 文雄(33=東京)1予3着→2予3着→東王4着

9着【5枠7番】三宅  伸(25=岡山)白虎2着→2予1着→西王3着

※左から着順、枠番・車番、選手名、年齢、登録地、勝ち上がり(青龍=青龍賞、白虎=白虎賞、東王=東王座戦、西王=西王座戦、王座戦は準決に相当、東王座戦の尾崎と阿部は同着)

▼決まり手=1着「まくり」2着「マーク」▼上がりタイム=13秒5▼払戻金=2枠単370円(1番人気)