【ヤマコウの時は来た!】

 ◆11R:決勝 

 3日目に取り上げた吉田拓矢が5着で決勝入りを決めた。赤板前に郡司浩平に押さえられ、いったん7番手まで引いて打鐘前から新田祐大との踏み合い。ただ先行するわけではなく、平原康多-武田豊樹とゴール前勝負できる航続距離だった。自分のレースができるようになり、今後の財産となってきそうだ。

 そして、大物選手の前を回る大切さを肌で感じて分かっているのが稲垣裕之だ。西王座も外並走から三谷竜生をたたきに行った。最終ホームでは近畿同士でもがき合いとなった。稲垣が切って三谷が先行。あるいは三谷が切って稲垣が先行、この展開を予想したが、いい意味で見事に裏切られた。稲垣は「岸和田で近畿別線で走るのはやりにくい。でも、5人にチャンスがある並びはそれしかない」と近畿別線になった経緯を話してくれた。「竜生が後ろから押さえに来て、いったん自分のところで止まった。ここで自力選手としてのスイッチが入った」とちゅうちょなく仕掛けて逃げ残りの3着。近畿勢の勝負度胸が光る一戦だった。

 今回は2日間、番手を回った稲垣。「先行する選手のスピードと、まくってくる選手のスピードをぎりぎりのところで判断するのは難しい。そこが鈍ったのが初日の敗因でした」とレースを振り返り、「2年前、(脇本雄太の番手を回りながら武田にかわされ)優勝を逃した自分とは違う自分を見てほしい」と締めくくった。

 決勝は関東勢がいかにも強力。だが、武田、平原に散々煮え湯を飲まされてきた稲垣にとっては格好のリベンジの舞台が整った。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)